時間と空間 time and space (168)

最終更新日:2002年05月10日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)から引用:括弧内は参照頁。

 これら両者は物質存在の基本的形式である。空間は三次元をもち、時間は一次元であり、空間は同時に存在する事物の分布の状態をあらわし、時間は諸現象がたがいに入れかわり立ちかわるそれらの継起をしめす。時間は過去から未来へというように物質の過程の一方向的変化、すなわち非可逆的な経過をしめす。哲学上、時間・空間が実在するか、それとも意識内にのみあるのかについて論じられてきた。観念論哲学者たちは、それらの客観的実在性を否定し、バークリ、ヒューム、マッハのように個人の意識に依存するとか、カントのように感覚的直観にそなわる先天的形式としたり、ヘーゲルのように絶対精神のもつカテゴリーであるとかとした。ベルグソンによれば、時間はまったく主観的体験とされる。唯物論は時・空の実在性をみとめると同時に、それらのそとに、すなわち超時間的・超空間的に、なんらかの存在物があるのをみとめない。唯物論の時・空についての捉え方は、その時代の科学的認識の発展水準に照応している。18~19世紀の自然科学はまだ、古代の原子論的唯物論者が考えたように、時・空は物質やその運動から離れて独自に存在するとされ、空虚を空間とし、時間はつねに同じテンポで経過するとされ、物質やその運動をその中に入れる容器のように考えられた(ニュートンの絶対空間、絶対時間がこれを代表する)。弁証法的唯物論は、時・空と物質との結合を、運動が時・空の本質をなすもので、物質と運動と時・空とは不可分一体だという見地からみる。この見地は、20世紀の物理学の発展によって立証されることになった。アインシュタインの相対性理論の主要な結論は、時・空が物質からはなれて独自に存在するのではなく、それらは全体的―不可分なものだとしめした。そこから時間の経過、物体のひろがりは、その物体の運動速度に依存するとされて、時・空を統一した四次元の見地から説明されるようになった。このさい、ロバチェフスキー、リーマン(G.F.B. Riemann, 1826~66,ドイツの数学者、物理学者)、その他の非ユークリッド幾何学者が新たな時・空の概念を成立させるのに貢献したし、この幾何学の出現は、カントの時・空論をまったく否定することになった。