戦略、戦術strategy and tactics (273-4)

最終更新日:2002年05月10日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)から引用:括弧内は参照頁。

 軍事的な意味では、戦略とは、戦争の目的達成する全局にかかわる基本方針をいい、戦術とは、個々の戦闘にかかわる方策をいう。労働者階級の階級闘争の場合、これらの用語は、軍事用語よりも包括的であり、階級闘争の実践を指導する目的・政策・方法をふくむ政治的態度・方策の意味で使われる。戦略・戦術の区別は、労働者階級の歴史的使命を達成する総過程からみれば、それぞれの歴史的段階によって規定されて相対的・条件的である。したがった、労働者階級の階級闘争の指導方針を、全体として階級闘争の戦術といいあらわす場合がある。一般的には、労働者階級の戦術の根本原則は、個々の闘争をこの階級の自己解放をめざす闘争の全過程の終極目標にむすびつけることでなければならない。この戦術の基本的任務は、唯物弁証法的世界観のすべての前提に厳密に一致して規定される科学性をもたなければならず、支配階級の支配の方策のように便宜的な術策ではない。すなわち、ある社会のすべての諸階級の相互関係の相対を客観的に考慮すること、またこの社会の歴史的発展段階、この社会と他の初回との国際的な相互関係をも考慮することが、その土台である。また、すべての戦術は、歴史的発展の弁証法を考慮にいれて、労働者階級の階級意識と闘争能力を発展させるために、発展が停滞する時期や飛躍の時期に、それぞれに適応した闘争力の結集、闘争手段の行使を規定する必要がある。

 戦略は、この歴史的階級によって規定される闘争の一般的進路・方向・目標を意味し、戦術(狭義の)は、戦略的観点のもとに、闘争の具体的形態、すなわち個々の情勢・局面における闘争形態・手段を定める方針を意味する。戦略・戦術は、1)客観的情勢、とくに見方の力関係を規定する客観的諸条件の分析、2)それにもとづく意識的・計画的な闘争の方針の決定、3)闘争の主力と同盟軍の配置・結集を促進する組織方針をふくむ。
 戦略と戦術との相互関係は、原則性と弾性力との統一としてとらえられる。戦略的目標・基本路線を堅持しながら、その過程の戦術には最大限の弾性力が必要とされる。労働者階級が、力のまさっている敵に打ち勝つためには、1)反動陣営の内部のあらゆる矛盾の利用によって、敵勢力の分散と弱体化をはかるとともに、2)労働者階級の力を増大させるために大衆的な同盟者を拡大しうる可能性を、ふたしかな一時的な同盟者までふくめて徹底的に活用することが重要である。戦術は戦略の個々の段階での具体化であり、戦略的観点から調整される。この点では、すべての戦術は原則的でなければならない。だが、戦術は、戦略的観点のわく内では最大限の弾力性をもたなければならない。戦術の弾力性が生みだす成果が、逆に戦略的展望をいっそう明確にする場合もある。戦略・戦術の問題は、唯物論的弁証法の高度な実践的適用の問題である。