量子論 quantum theory (507)

最終更新日:2002年05月10日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)から引用:括弧内は参照頁。

 1900年の量子発見によって、古典物理学の概念がそのままでは微視的領域でなりたたないことが明らかになると、古典物理学を変更して新しい理論をつくることが課題となった。1913年にボーア(Niels H.D.Bohr, 1885~1962,デンマークの物理学者)は、原子の中での電子のとりうる軌道を、量子の考えと結びついた特殊なものに制限し、また光の放出も量子論的に起こると仮定し、それ以外は古典論を使って原子スペクトル、元素の周期律、元素の安定性などを説明した。またド・ブロイ(Louis-Victor de Broglie, 1892~1987、フランスの理論物理学者)は1923年に粒子性と波動性とは光だけでなく、電子などすべての物質にもあてはまると考え、その予想はまもなく実験によって確かめられた。ここまでの段階を前期量子論といい、古典論と量子論との折衷である。ハイゼンベルク(Werner K. Heisenberg, 1901~1976、ドイツの理論物理学者)とシュレーディンガー(Erwin Schrodinger 1887~1961, オーストリアの理論物理学者)は、1925から26年にかけて新しい理論体系をつくった。これを量子論あるいは量子力学といい、分子・原子・原子核など微視的対象にたいしてなりたつ量子論では、状態と観測量の概念が古典論とまったく異なり、これが量子論の論理構造の基礎となっている。大きさのない1個の粒子を考えるとき、その状態は、古典論ではその粒子の位置と速度によってあらわされるが、量子論では粒子的性質と波動的性質とを同時にそなえた波動関数というものであらわされる。このことから一般に二つの量のあいだに不確定原理があらわれ、二つの量を同時に精密に量ることはできなくなる。量子論によって、化学反応および多くの生命現象、天体現象の法則の基礎が明らかにされ、量子論は物理学・化学・生物学・天体物理学などを結びつける中心的存在となっている。量子論を素粒子の生成・消滅のように量子数が変わる場合にまで拡張したものを、場の量子論という。→量子、不確定原理、相補性