否定の否定の法則 low of negation of negation

最終更新日:2002年05月09日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)(p388-9)から引用

弁証法
対立物の統一と闘争の法則
量的変化から質的変化への移行の法則、およびその逆
否定の否定の法

 唯物論的弁証法の基本法則のひとつ。それは、発展が不断におこなわれること・発展において新たな質の出現に当たって旧来の質との関連をもつこと・新たな質は旧来の質よりも高い段階たつものであり、発展は前進的方向をもつ過程であること-これらをしめす法則である。ヘーゲルがまず、彼の弁証法で、この否定の否定の法則を説き、彼らはその観念論的立場から、絶対理念の自己発展をいいあらわす法則とし、それはひとつの反定立の否定としての総合という見地をもって世界全体の発展過程を説明して、いわゆるトリアドの方式をたてた。唯物論的弁証法では、自然・社会・人間の思考をつらぬいておこなわれる弁証法的発展において、この法則はとくに対立物の統一と闘争の法則と密接に結びついて考察される。対立物の統一と闘争の法則は、矛盾・対立する両側面の闘争によって、その矛盾・対立が解決されて従来の質的状態が新たな質的状態へと移りいくことをしめす。すなわち、従来の質的状態の否定として新たな質的状態が出現する。この過程はそれで終わるのでなく、この新たな質的状態はその内部に生じる新しい矛盾・対立によって、この状態が否定されてさらに第三の質的状態へと移りいき、こうして発展は持続する。このような質的移行にあたって、旧来のものと新たなものとのあいだには、たんにまったくの断絶があるのではなく、旧来のもののうちにふくまれた積極的要素は、新たなもののうちにうけつがれ保存される。これが弁証法的発展における弁証法的否定であって、形而上学的否定が前後二つのもののあいだにまったくの断絶をみ、まったく別個のものとし、前のもの・旧来のもの破壊のみとらえるのと異なる。したがって、新と旧とのあいだには、そこに関連するものがあり、発展の過程の持続があるのである。しかし新しく出現したのは質的に新しうものであるから、たんに旧来のものの延長ではない。この点では、断絶があり、飛躍があるという面をもっている。こうして新たに出現した質的状態は、旧来のものから積極的なものをうけつぎながら、質的に新しいものとしてあらわれるのであるから、それは旧来のものより高い段階にあることになる。この関係が、質的移行後とにおこなわれるので、新しくあらわれる段階は、次々と、前段階よりも高いということになる。否定の否定の法則は、この点で、発展が前進的・上昇的であることをしめしている。また<否定の否定>とは、このような発展において、ひとつの出発点としてとらえられる段階がつぎに否定によって新段階にいたり、この段階は、論理的にいえば、ヘーゲルがみたように、高い段階においてではあるが、出発の段階にもどったことになり、これからまた発展がすすめられる、ということからいわれるのである。しかし、唯物論的弁証法は、このことから、世界の発展がトリアド=三段階的に進むとみるのではない。それは、否定の否定があくまで発展の不断の持続だとみなすのである。と同時に、それは形而上学的見方がするように、前後の質的変化をまったく切りはなすのでなく、脈絡あるものとし、この脈絡のうちに発展の低いものから高いものへの前進・上昇の過程をみるのである。→発展