量的変化から質的変化への移行の法則、およびその逆 low of transition from quantitative change to qualitative change, vice versa

最終更新日:2002年05月09日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)(p508-9)から引用

弁証法
対立物の統一と闘争の法則
量的変化から質的変化への移行の法則、およびその逆
否定の否定の法則

 弁証法の基本法則のひとつ。事物の変化・発展が、どのように、どういう条件でおこなわれるかを説明する。この法則の理解には、すべての対象(現象もふくめて)が、量と質との統一(度合)において存在することをみとめることがたいせつである(→質と量)。一つの対象が根本的に変化して他のものになるのは、量的変化によるのであるが、この変化が生じるには、まず、その対象がもっている量的規定の変化を前提とする。量の変化がある程度おこっても、質は変わることなくそのまま維持される。量的変化は、こうした一定の質的同一のうちで、気づかれず漸次的におこなわれ、それが一定の限界まで増大していくと、必然的に、一定の瞬間にその変化の過程に飛躍的な移りゆきが生じて、質のうえに根本的な変化おこり、古い質から新しい質へ移行する。このような変化の過程のあることをしめすのが、この法則である。これは、自然・社会、また思考を通じて、すべての過程に見いだされるものである。量的変化と質的変化は、相互にむすびあい、依存しあっているもので、ここにみたように、量の変化の結果として質の変化がみちびきだされるだけでなく、また質の変化は量の変化をみちびきだす。それは、すべての事物が量と質との統一であることから必然的にあらわれるもであり、質的変化が生じて古い質から新しい質になれば、この質はかならず新しい量的規定性をもつこととなるのであり、したがって新しい質は量の点でも新しいものをあらわしていなければならない。このことが、いわゆる<その逆>としてしめされる、この法則の他の側面である。さらに、注意されるのは、この量および質の変化は相対的性質をおびているという点である。すなわち、大きな、一般的な質のうちには、それより小さい、より一般性のせまい質もある。たとえば、資本主義という社会のもつ質にたいしては、産業資本主義や独占資本主義はより小さく、より一般性のせまい質である。しかし産業資本主義が独占資本主義に移行することで、前にはなかった新しい本質的な特徴・性質があらわれる。この意味では、両資本主義の段階は質的にちがっている。しかし、より大きい、より一般的な質からいえば、つまり資本主義全体の質からいえば、両段階とも本質的には同じ質をもっていることになる。このことでわかるように、量から質への変化・移行も、相対的な意味においてあらわれる。また、この量・質の移行には、飛躍といわれる非連続の面があると同時に、連続の面がある。非連続は質的変化にあらわれ、他方、連続は量的変化の側面にしめされる。この両面が、発展といわれるものにあることをみないと、形而上学的思考にみられるように、たんに量的変化だけをみて、飛躍をみとめないことになり、改良主義者や社会主義者のある者たちにみられるように、進化だけ、改良だけが社会発展の道だと考えるようになる。またそれとは反対に、量的変化の過程を無視して変化はただ飛躍にのみあるとみると、無政府主義者や極左冒険主義者の非科学的見解や行動になる。最後に、マルクス主義が説くこの方法は、ヘーゲルがこの法則についていうのとは、まったく反対である。ヘーゲルは、その弁証法で、最初にこの法則を定式化したのであるが、かれにあってはこの法則は絶対理念における論理的なもので、これをもとにして現実的世界を説明する方式にした。マルクス主義では、この法則はまず第一に自然において見いだされ、その反映である思考において法則として認識されるのであり、さらに社会においても、思考においても見いだされるとうことになる。この法則はそれゆえ思考がたてるのではなく、客観的実在の法則なのであり、思考のほうはそれを反映したものである。