労働labour (524)

最終更新日:2002年05月09日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)から引用:括弧内は参照頁。

 マルクスは労働について書いている、<労働はまず第一に、人間と自然とのあいだの一過程、すなわち、それにおいて人間が、人間の自然との質料変換をかれ自身の行為よって媒介し、規制し、統制する一過程である>(《資本論》第1巻)。人間は、外的自然に働きかけながら、この自然と自分自身とを変えるのである。自然を変えて、人間は自分の意識的目的を実現し、それを自分の要求に適合させる。このことは、同時に人間自身が持っている能力をたかめることであるし、生活の状態をさらにすすめることであって、人間自身がみずからを変えていくことになる。労働の過程には、三つの側面がある。1)人間の目的をもった活動、つまり労働そのもの、2)労働にとっての対象、3)人間が対象に働き変える際の生産上の道具。労働は、人間の生存にとって主要な条件であり、その生存に必要な資料を人間に提供するだけでなく、上述のように人間自身を新しくつくりだしていく。労働は動物界から人間を高めるはたらきをしたものであり、動物と人間との本質的差違の根本的なものは、動物は自然があたえる自然のままのものを利用して生きるが、人間は自然を労働によって、自分の目的にしたがって変え、自分の必要に適応させることに見いだされるのである。経済的社会構成体の差違は、労働を異なった形態であらわすようにさせる。またその形態は、社会関係の発展の水準をしめすものでもある。原始共同体では、労働は共同的におこなわれ、集団的であり、労働の成果もまた共同的に分けられ、搾取ということはない。生産手段の共有がその特徴だったのである。それ以後は階級対立の経済的社会構成体ではいずれも、人間の労働は搾取にゆだねられた。奴隷・農奴・近代労働者の労働がみなそれである。これが、社会主義になって生産手段の共有がとりもどされ、労働者の労働は搾取からまぬかれるにいたり、共産主義では労働は生産の第一義的な自発的行為となるのである。