ヤスパースJaspers, Karl 1883~1969 (480)

最終更新日:2002年05月09日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)から引用:括弧内は参照頁。

 現代ドイツの実在主義哲学者。ハイッデガーとならび称されるドイツの実在主義の代表者で、1921年からハイデルベルク大学教授だったが、1938年ナチス政権により教授の地位を追われ戦後に復職。1948~61年にはスイスのバーゼル大学教授。はじめ精神病理学の研究者として出発し、この研究がかれの哲学に大きく影響している。精神病理的現象のうちに、人間の個性のつよい探究があらわれていると考え、哲学的思考の源泉をそこからくみ上げる。合理的な科学の研究のしめすものは真の存在の暗号を扱っているのであり、この暗号を解き、合理的知識ではとらえられない世界を支配する非合理的なものを明らかにするところに最高の知がある。哲学はすなわち<暗号読み>を内容とし、最高の知をあらわにするのを課題にしている。この場合に<限界状況>が重要な意味を持ち、この状況に置いて人間に自己の実在の意義が現前して、暗号のうちにあって日常的な配慮や世界についての科学的見解からときはなされ、実在そのものに当面し、また神の真の経験をうる。こうして実在に目ざめた人間の交わりである<実在の交わり>が、真実の人間社会のあり方だという。かれは《原爆と人間の未来(Die Atombombe und die Zukunft des Menschen)》(1958)で、限界状況説から冷戦の有意義さを認める意見をだしている。[主著]Psychologie der Weltanschauungen, 1919; Philosophie, 3巻, 1932; Vernunft und Existenz, 1935(草薙訳)。