歴史history (519)

最終更新日:2002年05月09日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)から引用:括弧内は参照頁。

 ふつうには人間生活の過去からの変遷、一地域、一国、ないし世界にわたるその経過におけるさまざまな出来事そのもの、またはそれらについての記述をさしていう。人類の発生以来のその生活経過・変遷のうちで、出来事が文書に記録されはじめた時期を区切りにし、有史以前、有史以後にも分けられる。しかし、歴史的経過というものは、人間の変遷に限ったことではなく、自然もまた歴史的であるという認識が生じている。18世紀にカントが太陽系の生成について語った星雲説は、その顕著な例である。このように、自然にも歴史的経過のあることは、つぎつぎに明らかになってきた。ダーウィンの生物の進化論もその重要な業績であった。すなわち、諸事物が時間的移りゆきをもって発生し発展し、また消滅もしていくこと、過去・現在・未来を通じて変化にゆだねられ、発展をおこなっていくこと、このことが客観的世界における歴史を形成するし、またそのことの認識は人間によって記録され、記述される歴史となって、われわれに提供される。いいかえれば世界は全体として変化・発展が世界の姿であることが、人間生活の過去から現在にいたり、さらに未来を見渡して認められるばかりで、自然科学の探究が自然についても、このような事物の脈絡があることを明らかにしてきた。マルクス主義の弁証法的唯物論は、その世界観として自然・社会をつらぬく歴史という見地をその固有な特徴とし、とくに人間の社会にかんしては史的唯物論によって、社会の成立、その構造、そしてその変化・発展の法則をしめす。ここから科学は、たんに、一般的に認められている<歴史学>または<史学>と称されて、人間生活の過程をしめす歴史だけでなく、さらにもっとひろい範囲にわたって、事物の歴史的認識をおこなう側面をもっていることがわかるし、この側面を欠くことができないということになる。同時に実践においても、事物を停滞・固定した状態としてのみ扱うのではなく、歴史的に、すなわちその変化と発展とのもとに扱うことがもとめられる。要するに、これらのことは、事物に固有な弁証法をみとめ、形而上学的思考方法にとらわれては、真実の認識は保証されないし、正しい実践もなしえないということには、事物に固有な弁証法をみとめ、形而上学的思考方法にとらわれては、真実の認識は保証されないし、正しい実践もなしえないとうことにほかならない。