条件反射 conditioned reflex

最終更新日:2002年05月09日船戸和弥のホームページ

 人間および高等動物において、生得の反射が改変されて、本来は無関係であった刺激と反応とが結合して形成された反射。パブロフが犬の実験で発見した現象で、犬に一定の音を聞かせてから直ちに食物をあたえることをくり返すと、犬はその音だけで唾液を分泌するようになる。各個体が一定の条件下で形成する反射という意味で<条件反射>または<個体反射>といい、これに対して生得の反射を<無条件反射>または<種属反射>という。パブロフによれば、条件反射が形成されると新しい神経路が成立する。そして条件刺激(上例では音)による興奮は大脳皮質のある部位に到達し、新しい神経路を介して下位にある無条件反射の中枢に伝えられ、無条件刺激(上例では食物)がなくても反射反応がおこるのであると。条件反射は無条件反射を土台として形成され、それを調節する高次の反射である。自然界において動物にとって、環境の作因が多様であり、また絶えず変動しているので、作因と反応とが不変的に結合している無条件反射だけでは環境への適応が不十分である。他の作因を条件刺激とする条件反射を形成することによって、多くの作因集合が分析・総合され、同じ環境の中でより大きく適応することが可能になる。動物は高等になるにしたがって条件反射が複雑化、高度化し、また無条件反射よりも大きな役割をもつようになる。中枢神経系の発達は反射の進化に照応しており、中枢神経系をもつ動物はすべて条件反射を形成する可能性をもっているが、その最高部である大脳の発達は、条件反射の進化に照応している。パブロフ学派の研究によれば、ある条件反射が成立すると、同種の他の刺激によっても同じ反射が生起する(汎化)。条件刺激だけを繰り返して無条件刺激をあたえないと、ついには条件反射は消失する(消去)。消去は大脳皮質内に<制止>という過程が生じることによる。睡眠は、制止が大脳全体にひろがることによっておこる。その他多くの法則と仮説の体系が、パーブロフとその学派の広範な研究によって樹立された。条件反射学の確立によって、人間および高等動物の心理現象を実験生理学的に研究する道がひらかれた。また意識現象は、言語が条件刺激となって参与する条件反射を基礎として形成されると考えられている(→信号系)。条件反射学は神経症の研究に適用され、臨床方面にも応用されている。→反射信号系

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)から引用