土台と上部構造 basis and superstructure

最終更新日:2002年05月09日 船戸和弥のホームページ

マルクス主義の史的唯物論の用語。一つの経済的社会構成体を全体としてとらえるためのカテゴリー。土台と上部構造という表現は、建築物にたとえてしめしたもので、建築物が土台のうえにさまざまな構造をつくるように、社会構成体は社会の経済的構造、すなわち土台たる生産関係ののうえに、政治・法律・宗教等々がうちたてられることをいう(ちなみに、<土台と上部構造>といいかえられているが、これでは、本来マルクス主義が示そうとする意味がある。<下部構造と上部構造>といいかえられている、これでは、本来マルクス主義がしめそうとする意味があらわれず、正しくない言いあらしである)。マルクスの有名な言葉がある。<人間はその生活の社会的生産において、一定の、必然的な、かれらの意志から独立した関係、生産関係に入る。この生産関係は、かれらの物質的生産力の一定の発展段階に対応する。これらの生産関係の総体は経済的構造をかたちづくる。これが現実の土台であり、そしてそのうえに法律的及び政治的な上部構造がたち、そしてそれに一定の社会的意識形態が照応する。物質的生産の生産様式が、社会的、政治的、精神的な生活過程一般を条件づける>(《経済学批判》助言)。ここにみるように、土台とは経済的構造のことであり、それは生産関係である。生産関係は所有関係や分界関係をふくんでいる。土台と生産関係は同一物であるが、土台というときは上部構造との関係を、生産関係と言うときは生産力との関係を言いあらわしている。

上部構造は、一定の社会構成体における生産関係のうえになりたつ政治的・法律的、または宗教的・芸術的・哲学的な制度であり組織(国家・政党・教会、その他の施設・機関)であり、またこれらが成立するさいに働く政治・法律・宗教・芸術などの見解、すなわち社会的意識形態、イデオロギーが含まれる。

これら社会的意識形態といわれるものは、経済的関係を反映してできているが、それには政治・法律のようにその関係を直接的に反映している物もあるし、宗教・芸術・哲学のように間接的で、政治など直接的なものを媒介にしているものもある。これら上部構造はそれ自体、一定の相対的独立性をもち、土台に向かって作用しかえす面をももっている。政治や諸種のイデオロギーがその時どきの生産関係を促進したりたかめ保持したりするのに役立つのは、その例である。階級社会では、生産関係における階級対立を反映して上部構造にも対立があり、一方では支配階級に奉仕しその生産関係を擁護するために働くものがあると同時に、他方ではその階級に対して被支配階級の解散、したがって現存の生産関係を改革するために働くものがある。

それぞれの経済的社会構成体は、それに特有の土台と上部構造をもつ。すなわち、それぞれの高成体の生産様式がそこでの人びとの社会的生活様式による生産関係から政治的・精神的な生活改訂が規定される。したがって、奴隷制と資本主義などの社会的生活および政治的・精神的生活の特徴が生ずる。階級対立がなくされた生産関係(社会主義的生産関係)のもとでは、上部構造は基本的には敵対的対立をもたず、土台の改善、そのいっそうの発展のために働くようになる。

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)(p348-349))から引用