中脳の部側部の下丘(03)を通る断面

図中の数字と説明がリンクしてあります。

brainstem-c1.jpg (9910 バイト)

brainstem-c.gif (16252 バイト)

 中心管は、細い中脳水道となっている。中脳は3つの領域に分けられる。中脳水道より背側にある領域は中脳蓋であり、腹外側に突出した部分は大脳脚(11)とよばれ、両者の間の領域が中脳被蓋である。中脳水道を取り囲んでいる領域は、(中脳の)中心灰白質(20)とよばれ、上記の3つの区分からはやや独立して扱われる。中心灰白質の腹側部には滑車神経核(17)がある。外側毛帯(06)を通ってきた線維は、下丘にある下丘核(02)に終わっている。中脳被蓋では、左右の上小脳脚が交叉して、正中部に大きな上小脳脚交叉(14)を形成している。腹外側部には黒質(12)があり、黒質の腹側縁が中脳被蓋と大脳脚の境界となっている。大脳脚は橋底部を通っていた橋縦線維の吻側への続きであり、橋核がなくなって、縦走する線維群が露出したものである。

brainstem-c2.gif (30725 バイト)

図2:主な神経線維束の経過と方向を示す模式図(図中の数字と説明がリンクしてあります)。

01:下丘交連、02:下丘核、03:下丘、04:下丘腕、05:三叉神経中脳路核、06:外側毛帯、07:網様体、08:中心被蓋路、09:内側毛帯、10:線条体黒質線維、11:大脳脚、12:黒質、13:脚間窩、14:上小脳脚交叉、15:視蓋脊髄路、16:内側縦束、17:滑車神経核、18:背側縦束、19:中脳水道、20:(中脳の)中心灰白質、21:滑車神経交叉、22:滑車神経、23:視蓋橋核路、24:上小脳脚、25:脚間核、26:背側三叉神経視床路、27:前外束、28:淡蒼球網様体路、29:上小脳脚下行枝、30:皮質被蓋線維、31:頭頂側頭橋路、32:錐体路、33:前頭橋核路

ラテン語、日本語、英語、日本語の読み、冠名(Eponym)の順で記載されています。

01:Commissura colliculi inferioris(下丘交連)Commissure of inferior colliculus かきゅうこうれん

 下丘交連は左右の下丘をつなぐ部分。外側毛帯の線維もここを通り反対側へいたる。

02:Nuclei colliculi inferioris(下丘核)Nuclei of inferior colliculus かきゅうかく

 下丘核は外側毛帯を介して蝸牛神経核および台形体核から線維を受け、下丘腕を通って両側性に視床の内側膝状体へ線維を送る。

03:Colliculus inferior(下丘)Inferior colliculus かきゅう

 下丘は中脳蓋を形成する二対の隆起(四丘体)のうち下方の一対をいう。下丘は聴覚系の中脳における中継核で、細胞構築および機能的に中心核、外側核および周囲核の三つの核からなる。下丘核は外側毛帯を介して蝸牛神経核および台形体核から線維を受け、下丘腕を通って両側性に視床の内側膝状体へ線維を送る。

04:Brachium colliculi inferioris(下丘腕)Brachium of inferior colliculus かきゅうわん

 下丘腕は内側膝状体と下丘とをむすぶ。

05:Nucleus mesencephalicus nervi trigeminalis(三叉神経中脳核;三叉神経中脳路核)Mesencephalic nucleus of trigeminal nerve さんさしんけいちゅうのうかく;さんさしんけいちゅうのうろかく

 三叉神経中脳路核は三叉神経運動核の下端より少し下方の高さから中脳上端部に至る。非常に細長く延びた核で、橋の高さでは第四脳室の腹外側核の近くにあり、中脳では中心灰白質の外側縁にある。これは脊髄神経節の細胞に似た、少数の大きい偽単極細胞からなる。その突起は三叉神経中脳路を作りつつ下行し、三叉神経運動核に突起を出したのち運動根に加わり、主として咀嚼筋に分布し、その固有知覚を伝え、咬む力の調節に関与している。また中脳路核上部には外眼筋などからの固有知覚が伝えられるという。中脳路核から高次の中枢への連絡については不明である。

06:Lemniscus lateralis(外側毛帯)Lateral lemniscus がいそくもうたい

 外側毛帯は中脳まで上行し、大部分の線維が下丘に終わる。背側および腹側蝸牛神経核からの線維は、背側、中間および腹側聴条として対側に向かい、多くは対側の台形体背側核におわるが一部はそのまま上行する。この上行する線維と同側の台形体背側核から出て上行する線維が一緒になって外側毛帯を形成する。外側毛帯は橋の高さで内側毛帯(系)の背外側の位置を占めて上行し、大部分は下丘に終わるが、一部は途中下丘のすぐ腹側に存在する外側毛帯核におわる。

07:Formatio reticularis(中脳被蓋の網様体)Reticular formation ちゅうのうひがいのもうようたい

 中脳網様体は橋におけるほど広くない。赤核は網様体の一部ではあるが、通常は網様体といえば赤核を除いてその背側および外側の部分をさす。ここには①楔状核、②楔状下核および③脚橋被蓋核の3つの主な網様核が認められる。

08:Tractus tegmentalis centralis(中心被蓋路)Central tegmental tract ちゅうしんひがいろ

 中心被蓋路は赤核尾端からオリーブ核頭端にかけて網様体のほぼ中央部を縦走する線維束である。大部分の線維は小細胞性赤核におこり、同側の主オリーブ核におわる、とされている。線維束をその形状や位置で命名する場合には一般にfasciculusを用い、起始と終止で命名する場合にはtractusを用いることが多い。Tractus rubroolivarisはFasciculus tegmentalis centralisの主要な構成要素であるが、おそらく上行性の線維も含まれていると考えられる。小細胞性赤核を破壊してナウタ法でみると、大細胞性網様体にも終止性変性線維が認められる。これを赤核網様体路と呼ぶこともある。

09:Lemniscus medialis(内側毛帯)Medial lemniscus ないそくもうたい

 内側毛帯(旧名は内側絨帯)の線維束は、延髄の薄束と楔状束核に存在する神経細胞の神経突起からなり、延髄から薄束と楔状束を経て触覚や深部感覚などを伝える上行性伝導路の第1ニューロンである。すなわちこれらを構成する線維は、脊髄神経節の中の偽単極性知覚細胞の視床突起である。薄束核ないし楔状束核でシナプスを行った第2ニューロンは、内側毛帯(延髄視床路bulbothalamic tract)となる。視床を出た第3ニューロンの線維は、上行して大脳皮質におもむく。  内側毛帯系は脊髄から上行する識別性感覚路の最初の一環を形成するのは後根を通って入ってくる太い有髄神経の枝であり、後索を上行する。後索をじょうこうするこれらの神経線維は身体部位対応配列を示す。すなわち、仙骨神経根や腰神経塊を通って入ってくる上行枝は後索の内側部を占めて薄束を形成する。一方、頚神経根を通って入ってくる上行枝は後索の外側部を占めて楔状束を形成する。また、胸神経根を通って入ってくる少数の上行枝は、薄束と楔状束との間に位置する。薄束と楔状束は、延髄の尾側端でそれぞれ対応する神経核、すなわち、薄束核と[内側]楔状束核に終止する。ある後根が支配する皮膚領域は、同時にその後根の上下の後根からも支配されている。このように一定の皮膚領域を支配する隣接区根の神経線維群は、後根から後索、さらに後索核へと向かう経過のうちに、一つの神経束にまとまる。このような集束の結果として、隣接する皮節(dermatome)間の重なり合いは解消されるのであるが(一つの皮節からの情報を伝道する神経線維が集合しえ一つにまとまる)、後索で最初にみられたような層構造は次第に不明瞭になる。薄束核の背側部と[内側]楔状束核の背側部にはニューロンが幾つかの小群をつくって分布する。超す悪を上行する神経線維の中で、四肢の遠位部を支配するものがこれらのニューロン小群に終止して身体部位対応配列を示す。後索核の腹側部と吻側部では身体部位対応配列はあまり精細でない。後索には後核固有核から起こる内在性神経線維も含まれている。これらの内在性神経線維は後索核の腹側部と吻側部に終止する。その他、後側索(側索後部)を上行する神経線維は両側の後索核の腹側部と吻側部、およびZ群(group Z)に終止する。Z群は薄束核の吻側端に位置するニューロン群であり、下肢の筋からの入力を視床に中継する。上枝からの固有感覚性入力を中継するのは外側楔状束核である。この核から起こる投射神経線維は主として下小脳脚を通って小脳へ入る。後索核の腹側部と吻側部から起こる投射神経線維は、後索核背側部(ニューロンの小群の集合から成る)から起こる投射神経線維に比べて、分布範囲が広い。すなわち、前者も後者も反対側の視床へ向かうのであるが、前者はさらに小脳や下オリーブ核に投射し、脊髄の後角へ向かうものもある。薄束核と[内側]楔状束核からは内弓状線維が起こり、正中部で交叉してのち、内側毛帯を形成して上行枝、視床の後外側腹側核、後核群、内側膝状体大細胞部、および不確帯に終止する。後索核から後外側腹側核への投射は”核と殻(core-and-shell)”の様式を示す。すなわち、後索核背側部から起こる皮膚感覚の投射線維は後外側腹側核の中心部(すなわちcoreの部分)に終止し、後索核腹側部と吻側部から起こる固有感覚の投射線維は後外側腹側核の辺縁部(すわなち、shellの部分)に終止する。内側毛帯線維は後外側腹側核において一連の平行な層板をなして終止する。これらの層板は核のcoreの部分とshellの部分を通じて前後方向に伸びており、それぞれの層板が身体の特定の部位に対応している。また、各層板の前後軸に沿って、種々の感覚要素に対応する投射線維の終末が次々と配列分布する。

10:Fibrae strionigrales(線条体黒質線維)Striatonigral fibres せんじょうたいこくしつせんい

 線条体黒質線維は線条体の有棘ニューロンから起こり、主に黒質網様部の細胞に局在性投射をする。尾状核頭から出る線維は黒質の吻側部に投射する。被殻黒質線維は黒質のさらに尾側部に投射し、被殻の背側部は黒質の外側部へ、被殻の背側部は黒質の内側部へそれぞれ投射する。線条体黒質線維は線条体淡蒼球線維とはことなる線条体有棘ニューロン群から起こるが、同種の神経伝達物質、すなわちGABA、P物質およびエンケファリンを含有している。線条体黒質線維の大多数が黒質網様部に終止するが、黒質網様部と黒質緻密部のニューロンは、樹状突起が無棘であり吻尾方向に放射状に広がっている。ラットでは黒質網様部の細胞はほとんどGABA作働性であるが、サルではGABA免疫反応陽性のニューロンは黒質網様部の全域に存在し、線条体黒質線維のシナプスは対称性のタイプである。尾状核を電気刺激すると、刺激側の黒質の[3H]GABAの放出が著しく増加する。黒質網様部のGABA作働性ニューロンは黒質視床路を出し、この投射線維は多くの軸索側枝を上丘の中間層や中脳被蓋に出している。黒質視床路は視床の前腹側核、外側腹側核の一部および背側内側核の一部に終止する。これらの視床核は線条体のどの領域からも入力を受けない。

11: Crus cerebri(大脳脚)Cerebral crus だいのうきゃく

 狭義の大脳脚は大脳皮質の第Ⅴ層の細胞から出て内包を経て橋以下の部位へ投射する下行線維によって構成されている。これらは大脳脚の外側方より側頭橋路、頭頂延髄路、頭頂脊髄路、中心前回脊髄路、中心前回延髄路、中心前回被蓋路、中心前回橋路および前頭橋路と並ぶ。運動領皮質の中心前回から出たものは中央約2/5の位置を占め、その部の外側方から内側方に順に脊髄の下部から上部さらに脳幹脳神経核へ投射する線維が局在的に並ぶ。

12:Substantia nigra(黒質)Substantia nigra こくしつSoemmering's substance

 黒質の中脳被蓋腹側部の核で大脳脚の背側に接して存在する。ヒトの黒質の神経細胞は顆粒状のメラニン色素を豊富に含有するため、黒質は全体として肉眼的に黒くみえる。黒質には背側の緻密部と腹側の網様部が区分される。緻密部が神経細胞に富むのに対し、網様部では神経細胞の密度は粗で、細い神経線維に富む。したがて、前者は黒色部、後者は赤色部とよばれることがある。黒質からおこる遠心性神経線維としては、緻密部からおこり線条体に分布する黒質線条体線維、網様部から起こり視床のとくに内側腹側核(VM)に分布する黒質視床線維、および網様部からおこり上丘の中間灰白質に分布する黒質上丘線維などが主なものである。また、黒質に分布する求心性神経線維の起始としては、線条体・淡蒼球・視床下核(Luys体)が主なものである。これらのほか、前頭葉皮質・背側縫線核・扁桃体中心核・外側手綱核なども報告されているが不確実である。黒質は中枢神経系のうちでドーパミンとGABAの含有量が高い部位として知られる。ドーパミンは線条体に神経線維を送る黒質緻密部の神経細胞に主として含まれ、またGABAは線条体よりおこり黒質網様体に至る神経線維の軸索終末に主として含まれる。黒質に見られる線維はまたは11個のアミノ酸が連絡したペプチドとしてのP物質(SP)も含む。黒質は脳において最も高濃度にP物質を有する部位で、この物質は黒質の緻密部および緻密部内の神経終末に凝集している。網様部はまたエンケファリン作働性線維および終末も有する。尾状核および被殻の樹状突起の棘突起に含むニューロンから起こる線条体黒質線維はGABA、P物質、エンケファリンを含む。これらの線維は同様の伝達物質を有する線条体淡蒼球線維を出すニューロンとは異なる細胞集団から起こる。黒質はパーキンソン病(振戦麻痺)の原因となっている代謝障害に緻密に関係しており、Huntington舞踏病および異常な不随意運動や筋緊張の変化を特徴とする他のタイプの運動障害にも関与しているようである。パーキンソン病では黒質から線条体へのドーパミンの輸送および合成が極度に傷害される。Huntington舞踏病では線条体のドーパミンは星状であるがGABAは著明に減少している。

13:Fossa interpeduncularis(脚間窩)Interpeduncular fossa きゃくかんか

 左右の大脳脚間には脚間窩と呼ぶ凹みがある。脚間窩の底には、本来被蓋腹側面の一部をなし、出入り数小血管の為に多数の小孔を有する後有孔質によって作られる。

14: Decussatio pedunculorum cerebellarium superiorum(上小脳脚交叉)Decussation of superior cerebellar peduncles じょうしょうのうきゃくこうさWernekink's decussation

 上小脳脚は小脳核から出て初めは表面を走るが、下丘の高さで奥に入り交叉して一部は対側の赤核に終わり、一部は視床に至る。この交叉を上小脳脚交叉という。

15:Tractus tectospinalis(視蓋脊髄路)Tectospinal tract しがいせきずいろHeld's bundle

 視蓋脊髄路は四丘体と脊髄をむすぶ交叉性線維。顔面神経核と三叉神経核との間にある。 視蓋脊髄路および視蓋延髄線維は中脳の背側被蓋交叉で交叉して縫線の近くを下行し、延髄では内側縦束と共に走る。頚髄まで下行する視蓋脊髄路は主にⅦおよびⅧ層内に枝分かれする。

16:Fasciculus longitudinalis medialis(内側縦束)Medial longitudinal fasciculus ないそくじゅうそく

 前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、肥厚性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。

17:Nucleus nervi trochlearis(滑車神経核)Nucleus of trochlear nerve かっしゃしんけいかく

 滑車神経核は下丘の高さで、中心灰白質の腹内側にあり、動眼神経核の直接尾方延長部にあたる。これは動眼神経主核と同様に多極性の大細胞からなり、これから出る根線維は中心灰白質の外側部を背側方でやや下方に走り、下丘の下で完全交叉をおこない(滑車神経交叉)、脳を出る。なお滑車神経核の背側で中心灰白質中には背側被蓋核が認められ、また内側縦束の腹側には腹側被蓋核が区別される。

18:Fasciculus longitudinalis posterior; Fasciculus longitudinalis dorsalis(後縦束;背側縦束)Posterior longitudinal fasciculus こうじゅうそく;はいそくじゅうそく

 中脳から延髄にかけて中心灰白質の腹内側部にみれれる小さい神経線維束で、細い有髄線維を含む。上行性および下行性の比較的短い神経線維の連鎖であり、吻側では視床下部の室周線維に連絡する。自律性または内臓性情報の中枢伝導系の一つとされる。

19:Aqueductus mesencephali; Aqueductus cerebri(中脳水道;脳水道)Aqueduct of midbrain ちゅうのうすいどう;のうすいどうSylvius, Aqueduct of

 中脳水道はシルビウス水道ともよばれる。中脳では脳室系は細い管となり、間脳の第三脳室と菱脳の第四脳室とを結合する。これを中脳水道と称し、横断面は円形または底辺を背側に向けた角のとれた三角形をなし、中心灰白質によってかこまれる。その存在については古くから知られていたが、フランスの解剖学者Jacobus Sylvius (1478-1555)の著書(1555年)で初めて説明がなされた。

20:Substantia grisea centralis(中脳中心灰白質;中脳水道周囲灰白質)Periaqueductal grey substance ちゅうのうちゅうしんかいはくしつ;ちゅうのうすいどうしゅういかいはくしつ

 中脳中心灰白質は中脳水道を取り囲み密集する比較的小型の細胞からなり、機能的には均一ではない。この領域はこれまで中枢の鎮痛機構、発生、生殖行動の制御、攻撃行動、上方注視機構と深く関係するとされてきた。この中脳中心灰白質は視床下部、脳幹毛様体、縫線核、青斑核および脊髄からの入力を受け、これらの多くはさらに中脳中心灰白質からの相互の投射を受ける。中脳中心灰白質のニューロンはエンケファリン、P物質、コレシストキニン、ニューロテンシン、セロトニン、ダイノルフィン、ソマトスタチンに対して免疫反応陽性であり、ひとつのニューロンがしばしば複数のニューロペプチドを有する。中脳中心灰白質の腹外側部は、刺激による鎮痛に関して最も効果的な部位と思われる。中脳中心灰白質の腹側部へのモルヒネの微量注入により著明な鎮痛を引き起こすことが齧歯類動物において認められている。

21:Decussatio fibratum nervorum trochlearium(滑車神経交叉)Decussation of trochlear nerve fibres かっしゃしんけいこうさ

 滑車神経交叉は中脳下丘の高さにある滑車神経核から起こる線維が、常に反対側の眼筋を支配する滑車神経線維の交叉。

22:Nervus trochlearis [IV](滑車神経;第四脳神経)Trochlear nerve [IV] かっしゃしんけい;だいよんのうしんけい

 滑車神経は脳神経中最少のもので、滑車神経核からでて上斜筋を支配する鈍体性運動性神経である。この神経は脳の背側から脳を去る唯一の脳神経で、下丘のすぐ後方で、上小脳脚と上随帆小帯との間から出て、大脳脚をめぐり、(側頭骨)錐体尖の近くで硬膜を貫いて海綿静脈洞の上壁に達し、動眼神経の外側から上側に向かって前進し、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上直筋、上眼瞼挙筋起始部の上を前内側にすすんで、上斜筋に分布する。

23:Tractus tectopontinus(視蓋橋核路;視蓋橋路)Tectopontine tract しがいきょうかくろ;しがいきょうろ

 視蓋橋核路は、橋核に終止し、中小脳脚を経て小脳に刺激を送っている。この神経路は、視覚情報が小脳に到達する経路となっている。また、一部の遠心性線維は内側縦束に加わり、動眼神経核、滑車神経核および外転神経核の働きを調整している。橋小脳投射は、虫部のなかでは、山腹、虫部葉および虫部隆起で強力であるが、これらの虫部領域はいわゆる「小脳視覚野(視覚性入力をうける)」に相当する。これらの虫部領域には、橋小脳投射を通じて、上丘、一次視覚野(有線野)、および視覚連合野からの入力が入る。この場合、上丘から橋核への入力は視蓋橋核路を通る。

24:Pedunculus cerebellaris superior(上小脳脚;結合腕)Superior cerebellar peduncle じょうしょうのうきゃく;けつごうわん

 上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。

25:Nucleus interpeduncularis(脚間核)Interpeduncular nucleus きゃくかんかく

 脚間核は脚間窩の背側にある。この核は手綱核からの投射を反屈束を経由し受けている。多くのコリン作働性線維が脚間核に終止する。反屈束の線維のうちで脚間核を通過するものは上中心核、背側被蓋核および中脳中心灰白質に達している。背側被蓋核はまた乳頭体被蓋路を通して乳頭体からも線維を受け、中脳中心灰白質の腹内側にある小さな線維束である背側縦束と密接に関係している。これらの神経路は辺縁系に関連した信号を中脳の諸核に伝えている複雑な神経路の一部を構成しており、内臓や行動機能に関係する。

26: Tractus trigeminothalamicus posterior(後三叉神経視床路;背側三叉神経視床路)Posterior trigeminothalamic tract こうさんさしんけいししょうろ;はいそくさんさしんけいししょうろ

 三叉神経主知覚核からの二次線維には交叉性のもとの非交叉性のものとがある。核の背内側の細胞からは細い非交叉性線維束が出て、中脳の中心灰白質の近くを上行し、同側視床の後内側腹側核に終わる。これらの線維束を背側三叉神経視床路といい、下顎神経のみに関係した特有な経路と思われる。

27:Fasciculus anterolateralis(前外側束;前外束)Anterolateral fascicle ぜんがいそくそく;ぜんがいそく

 前外側束は前外側索系の表層部にあたる。前外側は脳幹では網様体よりも外方に位置する。

28:Tractus pallidoreticularis; Fibrae pallidotegmentalis(淡蒼球網様体路;淡蒼球被蓋線維)Pallidoreticular tract; Pallidoreticular tract; Pallidotegmental fibers たんそうきゅうもうようたいろ;たんそうきゅうひがいせんい

 淡蒼球被蓋線維はForelのH野から下行し、脚橋(被蓋)核(PPN)の緻密部に終わる。この核の一部の細胞は上小脳脚の線維間に散在する。サルでの研究により、淡蒼球内節の細胞は軸索が2分岐し、同一の信号を視床核と脚橋被蓋核に送ることがわかった。脚橋被蓋核の投射線維は淡蒼球内節、視床下核、黒質および視床核群に終止する。この核の大型細胞は強いコリン作働性である。ラットでは、脚橋被蓋核のコリン含有細胞は主に視床の外側腹側核へ投射すると考えられている。脚橋被蓋核およびその近傍の非コリン作動性細胞は線条体とその関連核へ投射すると記載されている。サルでは脚橋被蓋核は主に同側の黒質に投射する。この領域は、電気的に刺激すると歩行運動が生じるので、特に興味がもたれる。

29:Pedunculus cerebellaris superior, ramus descendens(上小脳脚下行枝)Descending branch of superior cerebellar peduncle じょうしょうのうきゃくかこう

30:Fibrae corticotegmentales(皮質被蓋線維)Corticotegmental fibres ひしつひがいせんい

 脳の高位レベルから起こる神経線維の中にも脳幹網様体外側部のニューロンに終止するものがある。これらのなかで重要なものは反対側の台の皮質運動領から起こる皮質被蓋線維と、反対側の赤核から起こる神経線維である。

31: Fibrae parietotemporopontinae; Tractus parietotemporopontinae(頭頂側頭橋線維;頭頂側頭橋路)Parietotemporopontine fibres; Parietotemporopontine tract とうちょうそくとうきょうせんい;とうちょうそくとうきょうろ

 頭頂側頭橋線維は頭頂、後頭および側頭橋線維で、頭頂葉、後頭葉および側頭葉をなどから出て内方を通って下行し、大脳脚をへて同側の橋核終わる。

32:Tractus pyramidalis(錐体路;錐体束;皮質脊髄路)Pyramidal tract すいたいろ;すいたいそく;ひしつせきずいろ

 複雑でしかもバランスのよい動作の背景には、多くの領域(大脳皮質、基底核群、視床下核、黒質、赤核、脳幹網様体、前庭神経核群、小脳、視床など)の関与がある。したがって、動作を実現させたり調節したりするための神経経路は非常に複雑なものになる。錐体路本来の定義に従えば、起始領域、終枝部位に関係なく延髄の錐体(pyramis)を通るすべての神経線維群をいう。鳥類以下には見られず、哺乳類とくにヒトでよく発達しており意識的運動を司る。これらの大部分の線維は大脳皮質からおこり脊髄におわる皮質脊髄線維(または路)からなるが、若干の線維は錐体の経過中またはそれよりも前方のレベルでの神経路から離れて脳幹にある反対側の運動性の脳神経核および付近の網様体(皮質網様体線維)におわる。これらの皮質核線維とよばれるものは厳密には錐体路に含まれないが、しばしば両者(皮質脊髄線維と皮質核線維)を一緒にして錐体路とよばれる。

33: Tractus frontopontinus(前頭橋路;前頭橋核路;前頭橋線維)Frontopontine fibres ぜんとうきょうろ;ぜんとうきょうかくろ;ぜんとうきょうせんいArnold, Tract of

 前頭橋線維は前頭葉より起こる皮質橋伝導路。大脳脚の内側1/6のところにあり、前頭葉と橋を結ぶ。

最終更新日: 2010年12月17日

funalogo.gif (2604 バイト)