Rauber Kopsch Band2. 26

b)男性の外部生殖器

1. 尿道球腺Glandulae bulbourethrales(カウパー腺Cowpersche Drüsen) (図262, 266, 267, 270, 335)

 尿道球腺は複合胞状管状腺であって,尿生殖隔膜のなかに対をなして存在し,深会陰横筋の筋束に包まれている.

 これは暗黄色ないし褐色をおびている固い2つの腺体,すなわち尿道球腺体Corpus glandullae bulbourethralisであって,円い形をして,エンドウ豆の大きさである.その個々の小葉が固い結合組織によってまとめられている.各側の腺の細い導管がたがいに鋭角をなして合してそれぞれ1本の導管,すなわち排出管Ductusexcretoriusとなる.

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これは約4cmの長さがあって,尿道海綿体球の上方で尿道の粘膜下を前方に走り,他側のものと密接して尿道の底に開口している.

 この腺の終末部はふくらんでいて,円柱状の明るい腺細胞をもっている.導管は丈の低い重層円柱上皮である.分泌物は粘液性のもので,その粘性が大きい.

 変異:ときおりこの腺がただ1個しかないことがある.まれに中央部に第3の腺がある.年をとるとともにこの腺はいっそう小さくなる.

 尿道球腺の終末部の形は一部は管状,一部は胞状である.導管系は腺の内外において小さい湖のように広くなっている.腺の分泌物はおそらく精子の運動を促進するのにあずかるのである.この腺には横紋筋と平滑筋が豊富にふくまれる.

2. 尿道の隔膜部Pars diaphragmatica urethrae, Harnröhrenenge(図266, 267, 270, 335)

 尿道の隔膜部は前立腺の尖端から尿道海綿体球の所までのびていて,尿生殖隔膜のなかにあって,その正中部を貫いている.それゆえここでは尿道は横紋筋の束で包まれる.なお会陰の項を参照されたい.

 隔膜部の前面は約2cmの長さであるが,後面は1.5cmに過ぎない.これはこの部分が尿道球のなかに斜めに入りこむからである.この部分は尿道のなかでもっとも狭くて,しかもかなり拡張性に富むところである.中央部の全周は約1.5cm,下端部では1.2 cmである.尿生殖三角の全厚を貫いて走るときに,その前面は凹を呈しており,恥骨弓の尖端から約2cm離れている.

 隔膜部の粘膜において前立腺部の単層の円柱上皮が次第に重層の円柱上皮に移行する.粘膜下組織には尿道前立腺部の海綿状の組織がここにつづいて尿道のまわりをぐるりと取りまいている.

 筋層は内側の縦走する平滑筋層と外側の輪走する平滑筋層からなっている.そのさらに外側には横紋筋からなる隔膜尿道括約筋M. sphincter urethrae diaphragmaticaeの束がつづいている.なお会陰の項を参照されたい.

3. 陰茎Penis, mdinnliches Glied(図262, 266, 267, 270, 322335)

 陰茎は男の交接器であるとともに長く伸びた膀胱の導出管であり,円柱形をしている.これは外陰部で陰嚢の上端において体の表面から突出しており,移動性に富む皮膚によって包まれている.陰茎の内部は主として海綿組織からできており,これは2つの長いほぼ円柱形をした部分に分けることができる.すなわち1. 尿道の終りの部分,つまり尿道海綿体部Pars cavernosa urethraeとそのまわりの海綿体,すなわち尿道海綿体Corpus cavernosum urethrae;2. 陰茎海綿体Corpus cavernosum penisである.これはその下面の溝に尿道海綿体を入れている.

 後部は陰茎根Radix penisといい,恥骨の前面に固くついている.自由端は陰茎亀頭Glans penis, Eichelという.根と亀頭のあいだの部分が陰茎体Corpus penis, Körper(od. Schaft)der Ruteであって,背方の平たい面と尿道面,および円い輪郭の両縁をもっている.背面は陰茎背Dorsum penis止いう.また尿道面Facles urethralisでは尿道海綿体部をみることも,触れることもできる.

 陰茎亀頭は背面の方と尿道面の方からやや圧平された形をしており,その端に垂直方向の裂け目があって,ここが尿道の出口すなわち外尿道口Orificium urethrae externumである.亀頭の底部は陰茎体よりも広くて,陰茎海綿体の細くなった前端をうけ入れるためのくぼみをもっている(図267, 325).くびれているところを亀頭頚Collum glandisといい,その上につきだしている亀頭の縁は亀頭冠Corona glandisとよばれる.

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この縁は各側とも陰茎の尿道面に向かって斜めの方向をとってすすみ,正中面上にある包皮小帯Frenulum praeputiiという1つの皮膚のひだのところで終る(図324, 331).

[図324]陰茎の海綿体とその筋 皮膚は取り去ってある.(3/5)

陰茎の構成

a)皮 膚Haut

 陰茎の皮膚は亀頭頚のところまでは一重の被いである.そこからは亀頭の表面から離れて管の形をしたひだを作る.これは亀頭の上で折れかえり,包皮Praeputium, Vorhautと呼ばれる(図266).このひだの内側の膜は亀頭頚のうしろで亀頭の被いに移行している.

[図325]陰茎の海綿体 その筋を取り除き,また亀頭を遊離させてある.(4/5)

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亀頭では皮膚は陰茎に密着しており.外尿道口のところまで前方に続いて,ここで尿道の粘膜と直接につづいており,また外尿道口の後方では包皮小帯をつくっている.

 皮膚は陰茎体ではきわめて薄くて脂肪をもっていない.また陰茎根のところ以外は毛をもっていない.その上に陰茎体の皮膚はきわめて容易に滑り動き,暗い色調をしている.包皮の前方に向かった開口,すなわち包皮口Orificium praeputiiを囲んでいる包皮の自由縁では皮膚の性状が変わっていて,むしろ粘膜のような様子となり,薄くかつ軟かくなって,赤みをおびている.亀頭の先端の尿道面から包皮小帯の前方で1本の縫い目が包皮の内側の面の正中線上を走り,そこから陰茎と陰嚢, さらに会陰の皮膚に続いている.これを陰茎縫線Rhaphe penisという.

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 Henneberg(Verh. anat. Ges.,1912)によると陰茎縫線は胎児および新生児においてはたいてい存在する.成人では約90%において欠如している.陰茎根から包皮まで達している縫線は3%に,陰茎の縦軸の中央部まで達しているのは5%にみられた,陰嚢縫線は成人においてそれよりずっとしばしばみられるが,すべての場合に存在するわけではない.

 亀頭頚と亀頭冠の周囲,および包皮の内側の膜にはいろいろな形と大きさの脂腺がある.これを包皮腺Glandulae praeputiales(Tysoni)という.これは簡単な小窩の形から,かなり複雑な形のブドウ状のものまであって,包皮小帯の周りに最もたくさん存在する.その分泌物は包皮垢Smegma praeputiiの成分の1つをなしている.包皮垢の主な成分はたがいに向きあった皮膚面から脂肪化して脱落した上皮細胞からできている.それより前方になると亀頭の表面には腺がなくなる.皮膚には弱いしわがあって,また敏感な多数の乳頭が存在する.

 陰茎の皮下組織は疎であって,その付近の皮膚の皮下組織,および陰嚢の肉様膜とつづいている.その内方にはかなり固い結合組織の層,すなわち陰茎筋膜Fascia penisがある.これは陰茎の海綿体をみな包んでいて,それらを全体として1つに結合することにあずかっている.

 陰茎の皮膚の血管には浅層のものと深層のものとがあり,それに相当してリンパ管にも浅層のものと深層のものとが区別される.浅層のリンパ管は皮下陰茎背静脈とともに陰茎筋膜の外側を走り,深層のものは筋膜下陰茎背静脈とともに筋膜の下を走っている.

b)尿道の海綿体部Pars cavernosa urethrae

 尿道の海綿体部は尿道のうちでよく発達した特別の海綿体,すなわち尿道海綿体Corpus cavernosum urethraeをその壁にもつ部分である.この部分の長さは12cmないし15cmである.

 尿道の後部は広くなっていて,ここは特に尿道膨大部Ampulla urethraeとよばれている.そこでは内面の全周が約1.75cmである.それより前方に続く部分は中間部Portio intermediaといい,亀頭のところまでほぼ同じ広さで,全周が1.6cmである(図322).横断面では内腔が横の方向の裂け目であるが,亀頭では垂直方向の裂け目のようになっている(図266, 330, 331).亀頭では尿道がふたたび著しく広くなり,舟状窩Fossa navicularis urethraeという舟形のへこみを作っている.これは外尿道口のすぐ後方で尿道が広がったところで,その長さは2cmである(図267).外尿道口ではふたたび狭くなっており,ここはひろげにくいところである.外尿道口は縦の方向にのびる2枚の唇で境されている.

 粘膜は引き伸ばされないときには大小多数の縦走するひだをもっている.このひだは粘膜が引き伸ばされると消失するのである.そのほかに尿道凹窩Lacunae urethralesというくぼみが特に尿道の上壁に沿って舟状窩より後方にある.その開口は弁状の膜に被われて,しかも前方に向かっている.この構造ヒダStrukturfaltenは変化に富むものであるが,その1つでかなり大きいものがたいてい舟状窩の後方にあって,上壁から弁のようにぶら下っている.これを舟状窩ヒダPlica fossae navicularisという.

 粘膜の上皮は重層円柱上皮である(図323).舟状窩のところからは重層扁平上皮となる.粘膜の結合組織の部分には弾性線維が豊富にあって,舟状窩にはよく発達した乳頭が多数にある.粘膜にはさらに経過の全体にわたって分枝した管状腺,すなわち尿道傍腺Glandulae paraurethralesが散在している.その終末部は海綿組織のなかにまでかなり遠く伸びていて,この組織に包まれている.また尿道の隔膜部では内方の縦走筋と外方の輪走筋層とがよく発達しているが,海綿体部では両層とも次第になくなってゆく.

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輪走筋は尿道膨大部のところでもなおよく発達しているが,これがまず消失する.そして海綿体部の前部では斜走および縦走する束からなる網だけがみられるのである.

 前立腺部と隔膜部においてもすでに少量ながら海綿組織が形成されている.ところが海綿体部ではこの組織が著しい発達を示して,大きい場所をしめている(図322).

それゆえ尿道の海綿体部の海綿組織からなりたっている部分を尿道海綿体Corpus cavernosum urethraeというのである.

 この海綿体は初めと終りが太くなっている.後方の太い部分は棍棒状で,先に述べた尿道[海綿体]Bulbus corporis cavernosi urethraeをもってはじまる(図325).

前方の太い部分が陰茎亀頭である.これらの間にある中央の部分は亀頭に向かって少しずつ縮小している.

 尿道球はその上面をもって尿生殖隔膜に接着している.またその自由面は球海綿体筋で包まれている(図262, 266, 324, 333).なお正中部には線維性の隔壁,すなわち尿道球中隔Septum bulbi urethraeがあって,これは子供の陰茎ではよく発達しているが,前方にはあまり続いていない.尿道は尿生殖隔膜を通り抜けてから球の後部に上方から斜めに入りこんでいる(図266).

 前方の太い部分は釣鐘のような形をしていて,その外形は陰茎亀頭に一致している.またそこには正中線に隔壁があって,これを亀頭中隔Septum glandisという.

この太い部分の後面が深くへこんでいて,ここにはまず尿道海綿体の中央部が続いており,ついで陰茎海綿体の細くて丸い前端部をうけ入れている(図267, 325, 331).

c)陰茎海綿体Corpus cavernosum penis

 陰茎海綿体は陰茎体の大部分をなしていて,陰茎体の形と固さは主としてこれによって定まるのである.その後端はたがいに離開する2つの部分,すなわち[陰茎海綿体]Crura corporis cavernosi penisに分れている.脚はとがって終り,恥骨枝の結合部と坐骨枝の恥骨部に付着している(図267, 325, 333, 335).

 後部ではそれより前方の部分にくらべて線維性の被膜がそれほど丈夫ではない.それゆえ脚は充満されるといっそう容易にかつ強く広がり,あちらこちらに軽いふくらみを作る.海綿体の前端はとがっていて亀頭の凹面に囲まれており,固い結合組織によって亀頭に固く着いている.

 陰茎海綿体の尿道面には正中に沿ってかなり目立った縦の溝があって,尿道の海綿体部の大部分をうけ入れており,これと固着している.それより弱い正中の溝が陰茎背にある.この背面の溝の中央には筋膜下陰茎背静脈があり,その両側に陰茎背動脈があり,さらにもっと外側には陰茎背神経がある(図329, 330).

 陰茎海綿体の正中面には(不完全な)隔壁がある.これを[陰茎海綿体]櫛状中隔Septum pectiniforme corporis cavernosi penisという.これは後方では厚くて,とぎれていないが,前方になるとだんだん薄くなり,左右2つの空所を不完全に仕切っている.ここでは多数の垂直方向の裂け目があって,それが両側の各半の海綿組織がたがいに自由につながる場所となっている(図267, 334).

 外方をここにむ線維性の被膜,すなわち陰茎海綿体白膜Tunica albuginea corporis cavernosi penisは緻密な結合組織であって,白色をしており,厚さは1~2cmである.この厚さは陰茎の緊張する度合によって変化する.陰茎の勃起のときは1/4またはそれ以下に薄くなる.この白膜は浅層の縦走する束と,深層の輪走する束とからなり,その何れもが線維性結合組織で,これに多量の弾性線維をまじっている.

 陰茎提靱帯Lig. suspensorium penisと陰茎係蹄靱帯Lig. fundiforme penisについては図262と第I巻図492を参照されたい.

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 海綿体を構成している海綿組織Schwammgewebeは結合組織の梁と膜からできていて,これには平滑筋線維の束が含まれており,これらが粗密いろいろな骨組み,すなわち[海綿体]小柱,Trabeculae corporis cavernosiを作っている.そのあいだの隙間はたがいにつながっていて,単層の内皮細胞によって被われている.この腔所を海綿体洞Cavernae corporis cavernosi, kavernöses Labyrinthといい,強く拡張したり収縮したりすることができ,そのなかには血液を入れている.

[図326]尿道の前立腺部の上部を通る断面×1

[図327]精丘を通る断面×1

[図328]尿道の前立腺部の下部を通る断面×1

[図329]尿道膨大部を通る断面×1

 1. 陰茎海綿体;2. 尿道海綿体球.

[図330]尿道の海綿体部の中間部を通る断面×1

 1. 陰茎海綿体;2. 尿道海綿体.

[図331]尿道舟状窩を通る断面×1

 1. 陰茎亀頭;2. 尿道海綿体;3. 陰茎海綿体尖;4. 包皮小帯

 動脈の枝は陰茎が縮んでいるときには係蹄状にうねっていることが多い.このようなものを螺行動脈Aa. helicinae, Rankenarterien という.

 流入する動脈は陰茎深動脈と陰茎背動脈から出ている.

 流出する静脈は一部は粗な表層の静脈網から,一部は中心にある海綿組織からでてくる.これらは一部は陰茎深静脈に,一部は筋膜下陰茎背静脈に集まる.

 尿道海綿体には上に述べたのと異なる点が若干ある.ここには深層と浅層の領域が区別されて,深層の領域は尿道の粘膜下組織の静脈叢からなりたっている.浅層のものはだいたいに陰茎海綿体の海綿組織と一致している.しかし小柱はいっそう細くて,腔所もいっそう小さい.さらに流入する動脈と海綿体洞との直接のつながりがここにはない.陰茎亀頭の基礎をなすものははなはだしくうねった静脈の群である.亀頭に血液をみちびく動脈は陰茎背動脈の前方の枝である.

 海綿体のもつ機能的意義は,そこに含まれる血液の量の変化によって,急激にその容積を変えうることにある.このためには海綿体洞がだいじな役目をしていて,この海綿体洞は壁に平滑筋をもっている巨大毛細管網ということができる.

 血液の強い流入は動脈と洞との直接および間接の結合によっておこり,一方血液の流出を少なくするための制御装置が存在する.

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[図332]男の会陰,骨盤出口の筋I(9/10)

4. 男性尿道Urethra masculinh, männliche Harnröhre(図266, 267, 326331)

 男性尿道は膀胱底から陰茎の前端まで伸びていて,4つの部分からなっている.そのうち第1の部分は膀胱壁内にあり,第2の部分は前立腺,第3の部分は尿生殖隔膜,第4の部分は陰茎にそれぞれ含まれている.これらの各部については壁内部,前立腺部,隔膜部,海綿体部としてすでに説明したから,その詳細が判つたことと考える.尿道の長さは20~25cmであるが,陰茎の長さとその状態によって著しく変化する.直径は各部分によっていろいろと異なっている.

 陰茎が弛緩しているときは,尿道は膀胱から外尿道口までのあいだで何回か弓状にまがっており,全体として横にしたSの字の形をしている(図266).陰茎を腹壁のほうに折りかえすとS字形の弯曲が,その凹側を恥骨結合のほうに向けた1ヵ所だけの弯曲をもつようになる.

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[図333]男の会陰,骨盤出口の筋II(9/10)

[図334]陰茎海綿体の櫛状中隔 左側からみる.

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 形態学的なこと:形態学的に特に興味があるのは前立腺小室と射精管の開口である.泌尿器生殖器系が精丘のところで相合して,両者がそれより先は同一の管を通路として利用している.形態学的にはこの通路はけっして尿道そのものではなくて,尿生殖洞Sinus urogenitalisであり,その縁が癒合して管状になったものである.これは女の尿生殖洞に相当するのである.

 ときとして男の胎児で尿生殖洞が大なり小なりの広さにおいて閉鎖しないで,開いたま,のことがある.

このような状態を尿道下裂Hypospadiaといい,そのような人をHypospadiaei(尿道下裂者)という.

 尿道の神経としては交感神経性の枝のほかに陰茎背神経と会陰神経の枝がくる.上皮のなかに上皮内自由神経終末がみられる.

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最終更新日 13/02/03

 

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