Rauber Kopsch Band2. 24

b)外部すなわち女性外陰[部]Pudendum femininum, weibliche Scham(女性の外部生殖器)

 外陰部(Cunnus, Vulva)は女性生殖器のうち外から見える部分,すなわち恥丘大,小陰唇,および陰核処女膜からなりたっている.

 外部生殖器と腔は交接器官Begattungsorganeであって,これらに対してそれ以外の生殖器は産生器官Zeugungsorganeということができる.

1. 恥丘と大陰唇Mons pubis et Labia majora pudendi, Schamberg und große Schamlippen

 恥丘Mons pubisは恥骨結合の前にあって,毛を持つ皮膚の部分であり,皮下脂肪がきわめてよく発達しているので,ひときわ目立って高まっている.恥丘は下後方で大陰唇Labia majora pudendiに移行する(図276, 285, 292, ~294).

 大陰唇はかなりふくらんで円みをおびた2つの皮膚のひだでその間に裂け目ないしは楕円の形をした空所,すなわち陰裂Rima pudendi, Schamspalteをはさんでいる.成熟した女では大陰唇の外表面は恥毛Pubes, Schamhaareで被われている.恥毛は腋からほぼ1手掌の幅だけ下方の水平線上から始まっている.大陰唇は内側に向かってだんだんその乾き方が変わっている.すなわち次第に赤みを増し,しめつてきて,むしろ粘膜の観を呈するようになる.しかし完全に粘膜と同じ構造とはならない.大陰唇の内部には脂肪に富む結合組織,神経,脈管,腺があり,なおそのほか平滑筋線維の束をもっている.左右の大陰唇は前方と後方において前,後陰唇交連Commissurae labiorum ventralis et dorsalisという皮膚のたかまりによってたがいにつながっている.前方のたかまりはいっそう幅がせまく,後方のものはそれより幅が広い.後陰唇交連は約3cmの長さの会陰Perineum, Dammによって肛門と境されている.後陰唇交連のすぐ前方で陰唇は陰唇小帯Frenulum labiorum pudendiという皮膚のひだに移行する.これは鋭い縁をなし,前上方に向かって凹の弓を画いて横走しており,最初の出産のときにしばしば裂ける.陰唇小帯の内方にはすでに腟前庭の後部をなすところの浅いくぼみがあり,これを舟状窩Fossa navicularis(vestibuli vaginae)という.

2. 陰核と小陰唇Clitoris et Labia minora pudendi, Kitzler und kleine Schamlippen

 前陰唇交連の後方には大陰唇に囲まれて,側方からやや圧平された形の低い突出物があって,これは粘膜で包まれており,陰核の先端,すなわち陰核亀頭Glans clitoridisである(図292~294).

 陰核Clitorisはいっそう大きな男性の陰茎とよく似た形と性状をもっているが,尿道はその中にない.陰核は3~4 cmの長さの陰核海綿体Corpus cavernosum clitoridis, Schaft des Kitzlers(陰核体)からできている.陰核体は左右各側で恥骨枝の結合部から長い陰核脚Crus clitoridisをもって起こっている(図293).左右の陰核脚は骨と平行して前方にすすみ,合して陰核体となる.ついで円みをおびた鋭角を作って後方にまがる.陰核体の正中面には不完全ながら隔壁があり,櫛状中隔Septum pectiniformeという.陰核体を被う結合組織の被膜を陰核筋膜Fascia clitoridisと名づける.恥骨結合から弾性に富む結合組織性の索が陰核の背面にきている.これを陰核提靱帯Lig. suspensorium clitoridisという.左右の陰核脚は坐骨海綿体筋(会陰の項を参照)で包まれている.

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 陰核の先端は粘膜で包まれており,丸みをおびている.これは前に述べた陰核亀頭Glans clitoridisであって,知覚がきわめて鋭敏である.

[図292]16才の少女の外陰部(9/10)

[図293]陰核の海綿体 前方からみる(4/5)

 陰核には2つの粘膜のひだがつながっている.これは大陰唇の間にあって,小陰唇Labia minora pudendi, Nymphae, kleine Schamlippenという.小陰唇はその高まり方が低いこともあるし,かなり幅の広いひだであることもある.小陰辱は両がわから腟前庭を囲み,外方は大陰唇とつながるが,これとはかなりまつ直ぐな縁で境している.

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 左右の小陰唇は前方においてそれぞれ2枚のひだに分れている.そのうち側方にあるひだは,左右のものが陰核亀頭の上で弓を画いて合し,亀頭の上方と側方を包んでいる.こうして陰核包皮Praeputium clitoridisを作っている.一方,内方のひだは陰核小帯Frenulum clitoridisをなしている.

 小陰唇をなしている内外の皮膚の板のあいだには脂肪がなくて,多量の弾性線維を含み,広がった静脈をもつ結合組織が存在する.この2枚の皮膚の板には血管乳頭がかなりよく発達しており,また脂腺もあるが,たいてい毛は1本も存在しない.

[図294]女の外陰部(9/10)

 陰核亀頭の粘膜は血管乳頭と神経乳頭をもち,そのなかには触覚小体と棍状小体がある.陰核の粘膜下組織には多数のファーテル小体(層板小体)Vatersche Körperchenがある.脂腺はごく少ない.脱落した表皮細胞が脂腺の分泌物といっしょになって白みがかかつた陰核脂膏Smegma clitoridisとなる.

3. 腟前庭Vestibulum vaginae, Scheidenvorhof(図292, 294)

 左右の小陰唇のあいだにある場所を,腟前庭Vestibulum vaginaeといい,前方は鋭角をなして始まって,陰核亀頭に接しており,後方で広くなり,後陰唇交連の前方でまた少しせまくなる.前庭には腟口と外尿道口が開いている.

 外尿道口はその壁が少し高まっているのがやや目だつ特徴である.そして腟口はそれよりずっと広いことが著しい.

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 腟口Ostium vaginae, Scheidenmundは処女では円い形をしていて,後縁はたいてい鋭くへこんでいる.前縁はしばしば少し後方に突きでているように見える(図292).前縁が強く突出している場合には腟口は半月形を呈している.へこんでいる後縁がひだの形をして腟の入口にのび出している.すなわちこのひだは腟を下方から不完全に境する壁であって,上方は腟の後壁に続いている.これを処女膜Hymen, Scheidenklappe, Jungfernhaütchenという(図292).

[図295]前庭球(青く塗つてある)を外方からみる×1

 海綿体に色素を注入して剖出したもの,大小陰唇を取り除いてある.

1. 恥骨結合;2. 恥骨;3. 坐骨;4. 坐骨結節;5. 腔前庭(外尿道口と腔口がみえる);6. 肛門;7. 陰核亀頭;8. 陰核提靱帯;9. 陰核背静脈叢;10. 前庭球;11. 大前庭腺;12. 陰核脚;13. 球海綿体筋(陰核への停止は少し強調して画いてある).

 処女膜は半月形をしているのが普通で,こういうものを半月状処女膜Hymen semilunarisという.ときおりひだが腔の入口を輪状にとりまいていて,中央に穴のある膜の形をしている.これを輪状処女膜Hymen anularisという.比較的まれであるがいくつかの穴のあいたフルイのような膜であることもあり,これを篩状処女膜Hymen cribriformisという.ときには粘膜の薄い膜で腔の入口が完全に閉じられている.このようなものは無孔処女膜Hymen imperforatusという.そのほか処女膜が丈の低いひだになっていたり,完全にないこともある.性交やそのほかの外力によって処女膜が破れる.そのあとがいろいろな形をして残って,疲痕化して,腔口の縁に不規則な形をしたでこぼこができる.これを処女膜痕Carunculae hymenales としいう.

 腟口の周りの全体に小前庭腺Glandulae vestibulares minoresという多数の粘液腺があって,輪状にとり巻いている.小前庭腺は前方で外尿道口を取り巻いている粘液腺といっしょになる.この腺は短い単一性の腺体をもっておるが,分枝した導管系もみられる.

前庭球Bulbi vestibuli(図295)

 陰核海綿体と陰核亀頭のほかに,前庭の両がわにあたって大きな静脈のかたまりがもりあがっている.その長さは3.0~3.5cm,厚さは1cmないしそれ以上である.

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これは前庭球Bulbi vestibuliとよばれて,静脈の密な網からできており,薄い結合組織性の膜で包まれている.前庭球の後端は丸みをおびているが,前方はとがっている.内側は粘膜に接し,外側は球海綿体筋に囲まれている.左右の前庭球は男の尿道海綿体に相当しており,そのつずきが尿道の上を越えて陰核亀頭に達しているが,この部分の静脈叢はいっそう小さくて密でないのである.この所で両側の静脈叢が相合し,また小陰唇の静脈をもうけ入れている.

大前庭腺Glandula vestibularis major (バルトリン腺Bartholinische Drüse)

(原文にはBartholinische Drüseとあるが,Bartholinsche Drüseが正しいとおもう.(小川鼎三))

 バルトリン腺は2つあって円形ないし卵円形の腺体をもち,赤みがかった黄色をしており,その大きさは大きなエンドウ豆,または小さなソラ豆くらいである(図295,11).

 この腺は男の尿道球腺に相当しており,腟口の後部の両がわで,腟口と球海綿体筋のあいだにある.また筋線維でぐるりと囲まれていることがしばしばある.この腺はたいてい前庭球の鈍い後端のところにはいりこんでいて,会陰横筋に接し,上下の尿生殖隔膜筋膜によって包まれている.導管は単一で1.5~2.0cmの長さがあり,処女膜またはその残存物のそばで小陰唇の内側面に開いている(図292, 294).大前庭腺は複合管状腺で,その構造は男の尿道球腺と同じである.

女性尿道Urethra feminina, weibliche Harnröhre(図275, 276, 292, 294)

 女性尿道は2.5~4cmの長さで,かなり太くて,その拡張性が大きい.膀胱の壁のなかをとおる壁内部Pars intramuralisとそのほかの部分,すなわち海綿体部Pars cavernosaを区別する.周りの壁が普通のときはたがいに密接していて,内腔は星形をしているが,径7~8mmにまで容易に広がることができる.膀胱の方に向かって軽くロート状に広がっている.尿道は腟の前壁に密接していて,これと固く結合している.

 外方の出口を外尿道口Orificium urethrae externumといい,腟前庭にあって,恥骨弓の後方で,陰核亀頭から2~3cm後方にあり,腟口に近く存在する.尿道のもっとも狭いところは外尿道口で幽る.

 尿道の壁は膀胱のすぐ下方でだけ独立していて,そこでは弾性に富む結合組織の外膜で外側が包まれている.それより下方では腟の壁と密着している.尿道の内側は白色がかった粘膜(粘膜下組織をもつ)で被われており,この粘膜は特に下端に近づくと縦走のひだをなしている.膀胱の方に近づくと粘膜は軟かくて海綿様になり,後壁には尿道稜Crista urethralisがある.

 粘膜のすぐ下には血管の網が発達していて,そのために断面では組織が海綿のような観を示し,これを尿道海綿体Corpus spongiosum urethraeという.これは平滑筋の束のなかにうずまっていてこの平滑筋が縦走および輪走する筋層Tunica muscularisとして尿道をとりまくのである.これらの筋層には弾性線維の束がからみあっていて,その外側に横紋筋の束が接している.横紋筋は上部では尿道を完全にとりかこんでいる.

 女性尿道は重層扁平上皮で被われ,これが上方は膀胱の上皮と,下部は腟の上皮と同じになっている.粘膜下組織には多数の小さな血管乳頭があり,また弾性成分も豊富で,リンパ球が混在している.尿道傍腺Glandulae paraurethralesは尿道の下部に比較的たくさんあり,分枝した管状の粘液腺である.この腺のかなり大きな集団が尿道傍管Ductus paraurethralisという特別な管をもって外尿道口のそばで外に開いている(図292, 294).

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女性外陰部の脈管と神経

外陰部の諸構造は一部は外陰部動脈から,一部は内陰部動脈によって養われている.静脈はだいたい動脈と一致している.筋膜下陰核背静脈は亀頭と陰核体の血液を受け入れている.前庭球からの静脈は子宮膀胱静脈叢に達するが,また一部は閉鎖静脈に入り,一部は外陰部にあるそのほかの静脈とつながっている.

 リンパ管は浅層のものと深層のものとがあって,はなはだ豊富である.

 神経は交感神経と陰部神経,および陰部大腿神経の3個所からきている.

 尿道の神経および脈管は腟と膀胱のものと結合しており,これらのものと共通の神経幹や脈管の幹から枝をうけている.

4. 女の骨盤出口の筋(会陰の筋,261頁参照)

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最終更新日 13/02/03

 

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