Rauber Kopsch Band2. 16

泌尿生殖器系Systema urogenitale

 泌尿器と生殖器は一部は同じ通路を利用している.この2つのは系統発生学的にも個体発生学的にもたがいに密接な関係をもっている.それゆえこれらを合せて記載することにする.

I. 泌尿器Organa urinalia, Harnorgane

序論と概説

 泌尿器は数多くの物質を排泄する役目をもっていてこれらの物質を総括して尿Harnと呼ぶのである.人の尿は芳香があり,塩からくて苦く,透明で黄色をおびた弱酸性の液体で,比重は1005ないし1030である.

 尿を分泌する器官は左右の腎臓Niereである.腎臓は尿の成分をこしらえるのでなくて血液からそれを分離させるのである.あらかじめ尿の成分が血液のなかにある.これは体の諸器官から血液に受け入れられて腎臓に運ばれる.馬尿酸だけ,およびあまり確実ではないが尿色素が腎臓で作られるとされている.他の諸器官と同じく腎臓もその生活機能によって生じた若干の老廃物を産出している.これはつまり腎臓固有の老廃物である.

 人間の泌尿器は左右の腎臓からできている.左右の腎臓にはそれぞれ尿の運搬にあずかる1つの通路がつながっている.これを尿管Harnleiterという.尿管は膀胱Harnblaseという貯蔵所に開目している.常に導かれてくる尿が膀胱に一時たくわえられ,絶えず外に滴り出ることがないようにしてある尿は最後に膀胱から尿道Harnröhreという流出管を通って外に出される.

A.腎臓Renes, Nieren(図223~236)

 腎臓はソラマメのような形をしている.つまり外側が凸で,内側の中央部がへこんでおり,前後に圧平された形である.縦軸はほぼ正確に上下の方向にむいており,下端はわずかに外側を指している.腎臓の表面は平滑で暗赤褐色を呈している.

 左右の腎臓にはそれぞれ前面後面Facles ventralis, dorsalis,内側縁外側縁Margo medialis, lateralis, 上端下端Extremitas cranialis, caudalisを区別する.Löfgren(1949)によると上端のほうがたいてい幅が広いという.

 前面は後面よりもいっそう円みを呈するのが普通で,また前面がやや外側にかたむいている.後面は前面より平らである.外側縁は外側かつ後方に向かって後腹壁に面している.

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[図233]右の腎臓と腎上体 前面(9/10)

[図234]左の腎臓と腎上体 前面(9/10)

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[図235]左の腎臓と腎上体 後面(9/10)

[図236]右の腎臓と腎上体 後面(9/10)

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 内側縁は上部と下部が凸をなし,中央部がへこんでおり,下内側かつ前方に向かっている.へこんでいるところに腎門Hilus renisがあり,そこを通って血管,神経,尿管が出入している.門をはいると腎洞Sinus renalisという深いくぼみがあって,そこは腎動静脈の枝,腎盂,脂肪組織で満たされている.腎門と腎洞とは腎実質からなる前唇後唇ventrale und dorsale Lippeによって境されている.両唇のうち後唇の方が前唇よりも幅が広くて,いっそう強く高まっている.また腎臓の後面は前面よりも幅が広くて,腎洞は程度の差が多少あるがかなり強く前方に向かっている.しかし腎門が後方に向かっていることもしばしばあり(Löfgren 1949),またごくまれであるが正しく内側方に向かっていることもある.

 大きさと重量:長さは平均11.5cm,幅5.5cm,厚さ3.7cmである.左腎・はやや長くて幅がせまく,右腎はやや短くて幅が広いのが普通である.

 Hoffmannは平均の大きさとして次の値をあげている.

 右腎 長さ11.2cm 幅5.6cm 厚さ3.8cm

 左腎 長さ11.8cm 幅5.45cm 厚さ3.5cm

 平均重量は120grから200 grの間である.左腎よりたいてい少しだけ重く,男の腎臓は女のより概してやや大きくて重い.腎臓の重量と体量との比はほぼ1:240である.比重は約1052である.(日本人の腎臓では右腎の長さ9.56cm,幅5.56cm,厚さ3.90cm,左腎の長さ9.89cm,幅5.41cm,厚さ4.25cmである.平均重量は100grから140grのあいだである.腎臓の重量と体重との比は約1=143である(安達島次,台湾医会誌24巻239号,1925).あるいは(岡睦, 京都医誌38巻,昭和16年下)成人の腎臓の平均重量は男では右132.1gr,左138.1gr,女では右121.7gr,左126.7grであり,また体重(kg)/腎重(gr)は男では右3.44,左3.61,女では右3.50,左3.72である.)

 局所解剖:I. 全身に対する位置関係では腎臓は腰部にあり,右腎は左腎より下方に達している(図166).

 II. 骨格との位置関係では腎臓は第12胸椎体の上縁から第3ないし第4腰椎体の上縁の間にある.腎門は第1腰椎体の高さに相当している.第12肋骨は腎臓の上を斜めに通りすぎるが,腎臓を折半するのではなくて,上1/3と下2/3の境のところを通るのである.Helmによると右腎は全例の2/3において左腎より下方にあるという.左右の腎臓の下端はたがいに離開して,いるから,上端は下端よりも正中線にかたよっており,それだけたがいに近寄っている.

 下端は脊柱からいっそう遠ざかつており,たがいに離開し多少とも腸骨稜に向かって近よっている.また上端よりも下端は幅がせまくて平たい.上端は正中線から4.5cm離れているが,下端は正中線からは6~9cm離れており,脊柱の側縁からは5~6cm離れている.外側縁は腰方形筋よりたいてい2~3cm外側につき出ている.

 III. 他の諸器官との関係としては腎臓の後方に横隔膜,腰方形筋腹横筋がある.右の腎門に接して下大静脈と十二指腸下行部とがある.左の腎門に接しては大動脈がある.上端にはそれぞれのがわの腎上体がのっており,これは前面と内側縁の上にもわずかながら達している.腎門には腎動静脈および神経があり,さらにリンパ節と尿管もあって,これらは脂肪組織で取り囲まれている.しかもそれらの位置関係は腎盂と尿管がいちばん後方にあり,それも尿管のほうが下にある.それに対して静脈は最も前方にあり,動脈はそれにまつわりついている神経とともに上述の両者のあいだを通ってはいっている.

 腎臓には次のような接触面を区別する.左右の腎臓の後面にはそれぞれ横隔面,腰方形筋面,肋骨面,腹横筋面Facles phrenica, quadrata, costalis, transversalisを分けるが,前面の場合と違ってそれを図によってあらわすことがむつかしい.

 右腎の前面には肝臓面,結腸結腸間膜面,十二指腸面Facles hepatica, colomesocolica, duodenalisがある.また上内側縁は腎上体面Facles suprarenalisをもっている.それに対して左腎の前面には胃面Facles gastrica,膵臓面Facles pancreatica,結腸結腸間膜面Facles colomesocolicaがあり,また脾面Facles lienalisが外側縁にも及んで存在し,上内側縁から前面に少しかかつて腎上体面Facles suprarenalisがある(図164, 237, 238).

 変異:腎臓には形,大きさ,位置についで多くの変化がみられる.ふつうよりも長くてほつそりとしていることがしばしばあり,またふつうより短くて丸くなっていることもある.ときおり一方が非常に小さくて,もう一方がそれに相当して大きくなっていることがある.片がわに腎臓がなくて,そのかわりに主として結合組織からできている結節が見られ,これに尿管がつながっていることがある.また1側の腎臓が尿管もろとも全く欠けていることもある.位置にもいろいろな変化があって1側または両側の腎臓が下方にあって小骨盤のなかに位置をしめて,ヘルニアの内容となっていることがある.もっとも多くみられるのはもともといくらか下方に達する傾向のある右腎がいっそう下方へ移る場合であって,このような腎臓を遊走腎Wanderniereという.腎臓がやや上方にあって第10肋骨にまで達していることがある.このようなことは左腎にいっそう多くみられる.また右腎がほとんど完全に肝臓によって被われていることもある.

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ときおり1側の腎臓(たいてい右腎)が腰椎の下端の前方にあって,円形ないし楕円形の板状物をなしている.このようなときに血管はたいてい前面に開口しており,ここは腎洞が広く延びたという形をしている.両側の腎臓が脊柱と大血管の前方を横走する中央の部分をもって下方でつながって,1つに合してい為ことがある.このような変り方をした腎臓は半月形をなしてそのへこんだがわを上方にむけている.その形からして馬蹄腎Hufeisenniereと呼ばれる.ときおり両側のものがたがいにつながった腎臓が腰部の片がわや骨盤のなかにあったりする.

 腎臓の数のふえていることがある.趣めてまれであるが3つの腎臓が存在する.余分の腎臓は脊柱の前方か,または左右どちらかの1側にあったり骨盤のなかにあったりする.

[図237]右の腎臓と腎上体の前面における他の諸器官との接触面

[図238]左の腎臓と腎上体の前面における他の諸器官との接触面

 子供の腎臓は成人よりもかなり下方にある.子供ではかなり多くの例において腸骨稜のところに達している(Gerota). Petrén(1934)によると2才までの幼児では右腎の上極は第12胸椎の下縁の高さにあり,下極は第5腰椎の下縁の高さにある.それに対して5~7才では上極は第12胸椎の上部の高さにあり,11才を超えた子供では下極が第3腰椎の上の高さにあるという.それゆえ右腎の上極はだいたい1椎骨分,下極は2椎骨分だけ上方に移動する.左腎の上極は2才から11才までの間に半椎体だけ上方に動き,下趣は2椎体も上方に動くのである.

腎臓の被膜と固定装置(図239)

1. 脂肪嚢Capsula adiposa.これは腹膜と腎筋膜Fasciae renalesを除くと腎臓のいちばん外の被いであり,疎な脂肪組織からできている.この脂肪は非常にやせこけた人以外には必ず存在する.脂肪嚢は腎洞のなかにはいりこみ,尿管の初まりのところで終わっている.

2. 線維被膜Tunica fibrosa.強い結合組織の膜で,平滑な被いとなって腎臓を包んでいる.

 弾性成分はそのなかに少ししかまざつていない.腎臓に割面を入れたときにこの被膜は腎臓が健康なばあいは実質の表面から容易にはぐことができる.

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 線維被膜は腎門を通って腎洞の底まで続いている.そして腎洞の底において腎臓にはいる諸血管を包む結合組織の鞘と融合している.

3. 腎臓の表面にはこの他になお平滑筋をともなった薄い結合組織の膜,すなわち筋質膜Tunica muscularisが密着している.この膜は線維被膜とはゆるくつながり,腎臓の実質とはしっかりと着いている.筋質膜は腎洞のなかで腎杯の付着部のところまで続いている.

[図239]腎臓を被っているもの,模型図,横断(Gerota)

 腎臓の固定装置は次のものである.すなわち腹膜,脂肪嚢を含む腎臓の腹膜下組織,結腸,腎上体(特に子供において),腎臓に出入する血管の幹である.主な固定装置としては腹膜下の結合組織から生じたものと考えられる腹膜下筋膜Fascia subperitonaealisである.これは前腎筋膜後腎筋膜Fascia praerenalis, Fascia retrorenalisという2葉に分れて腎臓を前後から包んでいる.後腎筋膜は腎臓自身には付着しないで腰方形筋膜と腰筋膜の結合する線上に付着している.腹膜は腎臓の前を通りすぎるところでは,他の固定装置じしんを固定するのに役だっており,特にこれは左側において著しいことである.腎筋膜の両葉と腎臓とは短い索状,ないしは膜状の結合組織東でつながっている.この束が脂肪嚢を貫いて腎臓の線維被膜に移行している.左腎は右腎よりもいっそうよくその位置が固定されている.それはまず3重の腹膜葉が前腎筋膜を補強しており,さらに下行結腸が腎臓の外側縁にあってこれを支えているからである.

 腎筋膜の両葉(前と後の腎筋膜)は腎臓および腎上体の上方と磨側方だけでたがいにつながって,ここで壁側腹膜に移行している.後腎筋膜は内側では腰筋膜とつながり,前腎筋膜は内方で太い諸血管の上を越えているから,この2枚の筋膜によって作られる“腎臓の筋膜嚢”は内側と下方が開いている.

 腎臓の可動性についてはHasselwanderとG. Wetzelによって研究がなされた. Hasselwander(Anat. Hefte, 46. Bd.,1912, Z. Anat. Entw.,115. Bd.,1951)は生体では吸気のさいに腎臓の位置が下がり,呼気のさいに正常の位置にもどることをみいだした.直立位では腎臓は下にさがる.Wetzel(Anat. Anz., 41. Bd, ,1912)は子供の死体で腎臓の移動が体位に伴なっておこることを確かめた.直立位では腎臓が下方にさがり,その逆の体位では上方にもどる.また腎臓の前方と内側方への移動および,回転についても記載されている.

腎臓の実質(図240, 242)

 腎臓の実質には色,位置,構造,堅さを異にする2つの部分がある.すなわち皮質髄質Rinden-und Marksubstanzである(図240, 241).

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 a)髄質Substantia medullaris, Marksubstanzは単一の塊りではなくて,かなり多数の円錐形をした腎錐体Pyramides renalesからできている.腎錐体の底,すなわち錐体底Basis pyramidisはたいてい凸を画いていて腎臓の表面の方に向い,皮質のなかにうずまっている.それに対して錐体の先端は腎洞のほうに向かっていて,腎乳頭Papillae renalesという小さい円錐形の部分をもって導管の初まりである腎杯のなかに突出しており,腎杯の粘膜とつながっている.

[図240]腎臓,腎盂,およびいくつかの腎杯の前額断(Henleによる)

 左右の腎臓にはそれぞれ約12個の乳頭のあるのが普通であるが,その数はきわめてまちまちで,7個から20個の間を変動する.底における直径が6~10mmの単一の乳頭の高さは5~8mmである.少数の乳頭,特に腎臓の両端にある乳頭の底はし}乱ばかなり広くなっていて,側面に溝をもっており,2つか3つの乳頭が融合したことを暗示している.憐接する2つの乳頭が細い結合部でつながっていることが少なくない.腎杯の付着しているところは腎杯を除去すると明かな離状のくびれがあって,これを乳頭のHalsという.錐体じしんについてみても,全体として底の高さとの比例に著しい差異がある.高さはたいていわずかながら最大横径よりも大きぐなっている.F. Löfgren (Lund 1949)は錐体の数が14個であって,7個ずつが前後の2列をなして並んでいるという.

 髄質は皮質よりも密で,そのなかを尿細管と血管がまっすぐにのびて走っているためにはっきりした条が見える.乳頭のところは錐体の実質が皮質よりも明るくて,髄質の内帯Innenzoneとよばれ,それに対して錐体の底は皮質よりも暗くて,たいてい青赤色の条が見える.その部分を髄質め外帯Außenzoneという(図241).

 b)皮質Substantia corticalis, . Rindensubstanzは腎迷路Nierenlaborrinthとも呼ばれて,線維被膜と筋質膜のすぐ下にあり,表面からだいたい5~7mmの深さのところまでであって,腎臓の表層部分をなしている.

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 腎洞を両側からとりかこむようにのびており,なお錐体の間にも突起を出している.この突起は腎臓を切断すると柱のようであるから腎柱Columnae renalesと呼ばれる.腎柱はその内部がどこもほぼ一様の性質で,少しく粒子状を呈し,赤褐色の外観をもっている.また柔かくて表面に対して垂直な方向に裂けやすい.腎臓を垂直の方向にさくか切断すると規則正しくならんだ明るい条がみられる.この条の多くは錐体の底から腎臓の表面に向かって放射状にすすみ,そのほかの皮質部を貫いている.腎柱のなかだけは水平方向にのびていることがある.この条は皮質のなかにおける髄質の突起であって,髄放線Striae medullares corticis, Markstrahlenと名づけられる.それが全体として腎皮質の放線部Pars radiataを作っている.その他の皮質部は迂曲部Pars convolutaと呼ばれる(図241, 242).

 皮質と髄質の容積比についてはHollatz(Z. Anat. u. Entw., 65. Bd.,1922)が成人3体について測定した.46才の男の髄質の容積は31.9ccm,皮質は82.9ccmで,髄質:皮質=100:259であった.新生児においてはこの比が(Parade, Z. Anat, u. Entw.,81. Bd.,1926)髄質:皮質=100:167.4である.

 若い個体では腎臓という1つの腺がもともと各錐体を単位にした個々の葉,すなわち小腎Renculiに分れたものであることを示している.この状態は多くの哺乳動物で生涯を通じて残っている.腎葉Lobi renalesのおのおのは実際には1個の錐体とそれをかこむ皮質の被いを合せたものである.一人の新生児でも腎臓は分葉を示しておあおのの葉が深い溝によってたがいに境されている.最初の何年かの間にこの溝は次第に消えてゆくが,深浅いろいろの切れこみが長いあいだ,あるいは一生を通じて残って,以前の状態を暗示していることもしばしばである.顕微鏡でみると皮質はやはり錐体と同じ数だけのたがいに分れた領域をいつまでもなしている.これが腎葉Lobi renalesそのものである.

 微細構造では左右の腎臓は複合管状腺で,それぞれほぼ100万本の尿細管Tubuli renales, Harnkanälchenからなりたっている.尿細管は1層の上皮で被われている約50mmの長さの細い管で,それぞれ揚所によっていろいろ異なった口径と構造をもっている.尿細管の初まりはすべて腎臓の皮質のなかにあって肉眼でも認めうる.りっぱな球形の腎小体Corpusculum renis(マルピギー小体Malpighisches Körperchen)である(図241).尿細管の他端は乳頭の頂に開口しており,そこでは乳頭孔Foramina papillarumというその開口部が乳頭の篩状野Area cribriformisを作っている(図243, 244).

 尿細管の走行はその初まりから終りまで直線的ではなくて,一連の曲折をくりかえすことが箸しい.尿細管には次のような多くの部分がある.

I 分泌と吸収の起る部分secernierender und resorbierender Teil.

1. 迷路部

 a) 糸球体嚢(ボーマン嚢) (径130~222µ)

 b)頚

 c)曲部(曲尿細管) (径40~60µ)

2. 係蹄部(ヘンレ係蹄)

 a) 下行脚(径9~16µ)

 頂

 b) 上行脚(径23~28µ)

3. 中間部(介在部) (径39~44µ)

 a)第1部(不規則な形をもつ細管)

 b)第2部(結合細管)

II. 導出する部分ausführender Teil

4. 集合部

(第1,第2,第3次などの集合細管)

a)第1次の枝(径25µ)

b)第2次の枝

c)第3次の枝

d)第4次などの枝

e) 乳頭管(径200~300µ)

1. 尿細管の迷路部pars labyrinthicaは髄放線のあいだの皮質にある.

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[図241]ヒトの尿細管の走行模型図 (Peterの横型図を参考として画いたもび))

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[図242]腎臓の切断面27才の男 概観標本

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尿細管は糸球体Glomerulumという特殊な糸玉状の血管を内部に収めている中空の球の形をした部分から始まる.この部分を糸球体嚢Capsula glomeruliという.

糸球体嚢からは尿細管の曲部portio convoluta tubuli renalesが尿細管頚Collum tubull renalisというくびれたところをもって始まっている.曲部はこの尿細管が属しているマルピギー小体の近くで不規則な多数のうねりをする.

2. このうねった尿細管の部分につづいてU字形の尿細管の係蹄部pars laqueiformis tubuli renalis,いわゆるヘンレ係蹄Henlesche Schleifeがある.係蹄部は髄放線と髄質の中を走っている.係蹄部には乳頭の方に向う下行脚(腎盂の方向にすすむPelvipetal)Crus descendens, absteigender Schenkelと上行脚(腎盂から遠ざかるpelvifugal)Crus ascendens, aufsteigen der Schenkelからできている.下行脚は髄放線の方向をとって長短いろいろの距離だけ髄質のなかをすすみ,ついで急にまがって方向を変えて上行脚となる.上行脚はまっすぐかあるいは少し波状にうねって皮質に戻っている.方向を変えるところを係蹄の頂Vertex, Schleifenscheitelという.

[図243]1つの乳頭を切断したもの 尿細管に注入してある ×6

 乳頭に向かってすすむ尿細管は何度か合流して次第に数を減じ,少数の管となって多少のへだたりを正叡の間にもって乳頭に開口している.

[図244]ヒトの腎乳頭 表面から節状野と乳頭孔およびその周囲をみたところ.

 a 小さな単一乳頭,b 大きな単一乳頭,c 複合乳頭 ×20

 ヘンレ係蹄をその口径によって3部に分ける.まず太い部分,ついで細い部分,つぎの第3番目はふたたび太い部分である.初めの太い部分と細い部分の移行はつねに下行脚において起る.細い部分と第3番目の移行は下行脚か上行脚のいずれかにある.

3. 係蹄の上行脚は少しうねって走っていて,皮質の曲部にある中間部Pars intermedia tubuli renalis, すなわち介在部Schaltstück(以前には第2次曲尿細管Tubulus contortus II. ordinisと呼ばれた)に続いている.

4. 介在部は尿細管の導出部である集合管Pars colligens tubuli renalisへの移行部である.個々の介在部は第1次の枝Ramus primariusと呼ばれている細い管(集合細管Sammelröhrchen,小川鼎三付記)に続いている.第1次の枝は髄放線の縁のところにある(図241, 242).これら第1次の枝の2本が合して第2次の枝Ramus secundariusとなる.第2次の枝の2本が集まって1本の3次の枝Ramus tertiariusとなる.こうしてずっと乳頭の先端まで達し,それまでに何本かの太い枝が合して乳頭管となり,これが乳頭孔をもって乳頭の先端に開口している.かくして覚一乳頭には15~20個の乳頭管があって,これが篩状野Area cribriformisに開いている.

 乳頭の頂の表面を落射照明でみると図244 aからcまでに示すようなものが見られ,ここを縦断してみた像(図242, 243)が事がらをいっそうよく理解させる.図244aは人の腎臓の小さな単一乳頭,図244bは大きな単一乳頭,図244cは複合乳頭である.

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1の乳頭に存在する乳頭孔Foramina papillarum, Harnporenの数は以前にはもっとずっと多いものと考えられていた.P. Müllerによると小さな単一の乳頭では平均10~15個の乳頭孔がある.わりあい大きな乳頭は24個までもっているが,まれにはそれより多いことがある.しかし複合乳頭は20~80個ないしはそれ以上の乳頭孔をもっていることがある.

a)腎小体(マルピギー小体)Corpuscula renis, Malpighische Körperchen(図245~248, 250)マルピギー小体は球形をしていて0.13ないし0.22mmの直径を有し,それゆえ肉眼でも観察することができる.これは球形の糸球体Glomerulumという糸玉状の血管と糸球体嚢Capsula glomeruliすなわちボーマン嚢Bowmansche Kapselからなりたっている.

[図245]子供の糸球体1個の鑞模型(W. B. Johnstonによる) ×400 AV 輸入細動脈; EV 輸出細動脈.

[図246]腎臓のマルピギー小体の糸球体上皮とポーマン嚢 模型図

[図247]マルピギー小体の糸球体 ネコの腎臓(C. Ludwigによる)

[図248]ヒトの腎臓の糸球体の被蓋細胞 ×800

 (K. W. Zimmermann, Z. mikr.-anat. Forsch.,18. Bd.,1929から)

 糸球体嚢は多角形の細胞からなる単層の低い上皮とガラスのように明るい薄い基礎膜とその外をここにむ少量の線維性結合組織からできている.糸球体嚢に2つの極を区別するが,1つは尿管極Harnpolで,そこから尿細管の頚が出ている.その反対側にあるのが血管極Gefäßpolである.血管極には輸入細動脈Arteriola afferensという1本の細い動脈がはいってくる.そして糸球体に達するとたいてい何本かのいっそう細い枝に分れる.これらの枝が糸玉のように強くからみあった毛細管係蹄を作っており,これらの係蹄のあいだには吻合がわずかしかない.

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こうして各々の糸球体は2つないし5つの小葉からなりたっていて,これらは裂け目によってたがいにかなりはっきりと分れている.毛細管はふたたび輸出細動脈Arteriola efferensというただ1本の動脈に集まり,輸入細動脈と密接して血管極のところからボーマン嚢を出てゆき,その先きがふたたび分れて毛細管網を作っている.

 糸球体嚢のなかにある糸玉のような血管の集りを腎糸球体Glomerulum renaleと名づける.血管極はボーマン嚢の単なる隙間では決してなくてその壁が折れ返っているところであり,それには上皮と基礎膜とが関与している(図246).こうして外側の嚢のなかに内側の嚢ができる.内外の両嚢の間には曲部とつながるところの嚢内腔interkapsularer Raumがある.内側の嚢は糸球体をぴったり取りかこみ,また糸球体の小葉の間にも入りこんでいる.内側の嚢をなす細胞が被蓋細胞Deckzellenであって, K. W. Zimmermann(1933)によると人では簡単な形をしていて(図248),個々の細胞の境はあるところではかなりはっきりしているが,あるところではあまりはっきりしていない.

[図249]a ラットの腎臓細胞を遊離させたものとその小棒構造(Zimmermannによる) ×400

 bとC 尿細管の上皮細胞 モルモツト側方および表面からみたところ,クロム銀染色.×500(Böhnによる)

 しかしvon Möllendorff(Z. Zellforsch., 6. u 11. Bd. )とBargmann(1931)は被蓋細胞が構造および形の上から血管の外膜細胞に等しいと考えている.しかもClara(Z. mikr.-anat. Forsch., 40. Bd.,1936)は新生児の糸球体がまだすき間のない上皮で被われていることを発見した.しかし成人では血管趣の近くにだけ1層のつながった上皮がある.そのほかの糸球体表面の大部分は被蓋細胞のきれいな網で被われている.個々の被蓋細胞は枝分れして,その細大いろいろの突起が横に渡された橋でたがいにつながっていることがあり,糸球体の毛細管を爪の形かタガのように包んでいる(図250).この場合に被蓋細胞は直接に毛細管の基礎膜の上に接していて,その間に糸球体全体とその小葉を被うような特別な上皮下の基礎膜は存在しない.上皮下の基礎膜というものはないのである.(外側の)ボーマソ嚢の基礎膜は. 血管極にまでつづいてそこでなくなり,そこで毛細管の基礎膜がその続きをなしている.

 内側と外側の嚢およびこれらによって包まれた糸球体をひつくるめて腎小体Corpusculum renis)マルピギー小体Malpighisches Körperchen)といい,左右の腎臓におのおの約100万くらい存在する.

 Moberg(Z. mikr.-anat. Forsch.,18. Bd.,1929)は左右の腎臓の腎小体は合せて179万から347万のあいだにあり,したがって1個の腎については89万5千から173万5千個あることをみいだした.

b)尿細管のそのほかの部分(図242, 246, 249258)

 ボーマン嚢をなす基礎膜と単層上皮は尿細管の壁に続いている.尿細管の頚においては上皮の丈が高くなって短い円柱形となるが,尿細管の曲部ではそれがもっと高くなる(図246).上皮細胞の原形質が基礎膜に接する外方の部分に一見,垂直に走る棒状の線維のような糸がはっきりとみえる.(Heidenhein).このような細胞を“小棒上皮細胞Stäbchenepithelzellen”といい,この小棒の集りを“小棒装置Stäbchenapparat”という(図249 a, b, 256).尿細管の内腔に向う側には放射状に並んだ繊細な条のある縁がある.

これを刷子縁Bürstenbesatzという.

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[図250]腎臓の糸球体の被蓋細胞 30才の男 ×約700 基礎膜と間質結合組織は青.(M. Clara, Z. mikr.-anat. Forsch., 40. Bd.,1936から)

[図251]ヒトの腎臓の輸入細動脈の極枕Polkissen基礎膜と間質結合組織は青.(M. Clara, Arch. Kreislaufforsch., 3. Bd.,1939から)

[図252]髄放線の横断 19才の男の腎臓(図中Crus descendensとCrus ascendensがたがいに入れかわっている.(小川鼎三))

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[図253~255]腎皮質の断面26才のヒト(Peterによる) ×234

[図256]刷子縁と小棒構造 曲部の細胞(Césa Blanchiによる)

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[図257]腎髄質の外帯の横断26才のヒト(Peterによる) ×260

[図258]腎髄質の内帯の横断 ヒト(Peterによる)×260

[図259]尿管(腹腔部)37才の男 横断 Böhm(モルモットで)とK. W. Zimmermann(ネコとイヌで)によるとこれらの細胞は多数の深刻な高まりを側方にもっていて,たがいにかみ合っており,そのため表面はきわめていりくんだ様子をしている(図249 c).

 ヘンレ係蹄の最初の太い部分は曲部と同様の性状の上皮細胞をもっている(図252).それにつづく係蹄の下行脚は丈の低い,明るい上皮をもっている(図257, 258).この部では細い管の周りを囲むのがただ1個の細胞で足りている所がしばしばみられ,あるいはその場合になお隣りの細胞の一部分が加わっているという状態である.核は内腔に向かって突出している.内腔は核の在り場所がいろいろ変わっているために波状を呈している.

S.189

 ヘンレ係蹄の第2の太い部分は瓦屋根のようにたがいに並んだ丈の高い1層の上皮細胞からなっていて(図257),“小棒装置”はよく発達していない.しかし介在部,とくにその初まりの部には極めてはっきりした“小棒装置”がある.介在部の第2の部分すなわち結合細管は透明で丈の低い上皮細胞をもっている.この上皮細胞が集合部では高さを増して円柱形になる(図254, 255).第1次の枝,第2次の枝などとそれに乳頭管は円柱細胞をもっている(図257, 258).乳頭の表面は多列円柱上皮で被われ,これが次第に腎杯の移行上皮に移っていく.

 尿細管の基礎膜は(Mallによると)はなはだ繊細な原線維からできていて緻密なフェルトのようである.

 腎小葉Lobuli corticales, Nierenläppchenは皮質の小さい円錐状の部分で,それぞれ1個の髄放線とそれに属するマルピギー小体ならびに尿細管の系統からなりたっている.小葉間動脈と静脈はこれらの小葉の境にある.したがって各々の腎小葉は放線部Pars radiataと曲部Pars convolutaからできている(180頁をも参照のこと).

腎臓の血管,リンパ管,神経(図223~236, 245248, 250, 251, 260, 261)

 腎臓の血管,すなわち左右の腎動脈腎静脈Aa. et Vv. renisは尿細管と同じよう.に腎臓のはたらきに適した巧妙な配置を示している.左右の腎臓はおのおの1本ないしそれ以上の腎動脈A. renalisによって養われている.腎動脈は大動脈から出ていて,腎臓という器官の大いさの割りにはなはだ太いものである.腎門へ入る前に腎動脈は何本かの枝に分れ,その多数のものは腎盂の前で腎洞にはいる.これらの枝は比較的細い枝を腎被膜と腎杯に送ってから葉間動脈Arteriae interlobares renisとなって,枝を出さないで腎乳頭や錐体のあいだを通って錐体底にいたり,錐体底に沿って皮質の方に向かって凸の不完全な弓を画きながら走っている(図260).

 弓の凸縁から規則正しい間隔をおいて皮質内に向かって放射状に放線状皮質動脈Aa. corticales radiatae(図260のという枝を出している.この枝のいちばん外側にある終枝は皮質の毛細管網のなかに直接に合している.しかし放線動脈からでる多数の側枝は輸入細動脈Arteriolae afferentesであって,この細動脈はおのおの1つのマルピギー小体にすすみ,そこで迷網Wundernetzとよ1ばれる動脈性毛細管の網を作り,ふたたび輸出細動脈Arteriola efferensという1本の動脈になって出てゆく(図247).

 放線状皮質動脈の少数の枝は腎臓の表面まで達して腎被膜にひろがっている.この枝を被膜枝Rami capsularesというが同時に腰動脈の細い枝ともつながっている.

 輸出細動脈は輸入細動脈よりやや細くて,毛細管の広くひろがった網に移行し,この毛細管は髄放線では長くのびた網の目をもち,迂曲した尿細管の周りでは丸みをおびた網の目をもっている.

 毛細管網は輸出細動脈のつづきをなすのみでになくて,そのほかに上に述べた放線動脈の終枝および一部の輸入細動脈からの直接の枝もきている(K. Ludwtg 1843;Elise Dehoff, Virchows Arch., 228. Bd.,1920).

 この毛細管網からやっと静脈が出て来る.これは放線状皮質静脈Venae corticales radiatae(図261 b)とよばれ,同名動脈のそばを走って弓形静脈Venae arciformesというアーケード形の静脈に開口している(図261 b).ついで弓形静脈は葉間静脈Vv. interlobaresに移行し腎洞のなかで腎静脈に集る.皮質の最外部の静脈は皮質の辺縁に散在している星状静脈Venae stellatae(図261 g)という小さな静脈に集る.この静脈は放線状皮質静脈につながるか,または直接に弓形静脈につながっている.

 皮質の血管は以上のような状態である.髄質は血液を髄質直細動脈Arteriolae rectae medullares(図260のから受けとっている.この直細動脈は一部は糸球体の輸出細動脈からつづき,一部は放線状皮質動脈から直接の枝として,また一部は動脈が錐体の底に沿って弓をなして走っているところの凹縁から出ている.髄質の直細動脈は鋭角をなして枝分れをして,これをくりかえしながら尿細管の間を下行し,毛細管の密な網を作って尿細管を包み,乳頭の表面にまでのびている.乳頭では動脈の輪をなして乳頭管の開口部を取りまいている.戻っていく静脈は髄質直細静脈Venulae rectae medullares(図261 p)といい,弓形静脈に開口する.

 腎臓に固有の機能調節装置がマルピギー小体の血管極の近ぐにある.すなわち極枕Polkissenと血管極のそばならびに血管のまわりにある細胞の集団,および密斑Macula densaである.

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 極枕Polkissen(K. W. Zimmermann, Z. mikr.-anat. Forsch., 32. Bd.,1933)は輸入細動脈の壁にある丸みをおびた大きな細胞の集まりである(図251)この細胞は内皮の管を一様にとりかこむような配列をしていないで,血管極の近くの1ヵ所に集まっていることが普通である.

[図260]ヒトの腎臓における動脈の走行模型 (M. Gännsslen作図).

 a, b 葉間動脈;c 放線状皮質動脈;d 輸入細動脈;e 糸球体;f 輸出細動脈 g 丸い網目をもつ毛細管網;h 髄放線の長い網目をもつ毛細管網;i 糸球体と関係なく終る細小枝freier Wipfelast; k 輸入細動脈から出る枝で糸球体と関係のないもの;l 放線状皮質動脈の幹から出る枝で糸球体と関係のないもの; m 筋質膜に向う細い被膜枝;n 穿通して線維被膜に達するもの;o 貫通する太い被膜の血管;p穿通動脈(Haller--Hyrtl);q 仮性直細動脈;r 真性直細動脈;s 伴行血管(真性直細動脈);t 髄質の直走する血管;u 髄質内の毛細管網.

この細胞は血管の中膜が変形したもので,多数の神経をもっているといわれる.極傍細胞群paraportale Zellengruppen(Becher, Morph. Jahrb.,85. Bd. )はマルピギー小体の血管極の近くにあり,上皮様の形態をした細胞の集まりであって,介在部の上皮に由来するもので,神経を受けている.放線動脈に沿って存在するこれに相当する細胞の集団は血管傍細胞群Paravaskulare Zellgrappenと名づけられている.密斑Macula densa(K. W. Zimmermann)は介在部の一部であって,所属する輸入細動脈に接するところで著しく核に富んでいる部分である.Sockelplasmodium(Sockelは台座の意味, 小川鼎三)は2つの細動脈(輸入細動脈と輸出細動脈)の作る角のところにある細胞集団である.これらの装置は極枕の細胞がふくれると輸入細動脈を通る血流がさえぎられることによって糸球体の機能を調節するものといわれている(Becher, Ärztliche Forsch., III. Jahrg.,1949, Anat. Nachr., Bd.1,1950).

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 動静脈吻合はGeberg(Internat. Monatsschr. Anat. Phys., 2. Bd.,1885)が腎被膜てイヌの)において発見した.またGolubew(同じく10. Bd.,1893)は腎実質(哺乳動物と人の)においてそれを見いだしている.しかもそれは境界層(皮質と髄質の),腎柱,腎杯の腎乳頭への付着部においてである.

[図261]ヒトの腎臓における静脈の走行模型 (M. M. Gännsslen作図)

 a 葉間静脈;b 弓形静脈;c 星状静脈から起る太い放線状皮質静脈;d 放線状皮質静脈;e 浅皮質静脈;f 深皮質静脈;g 星状静脈;h 毛細管領域の静脈性の部分;i 糸球体があるための空白;k 2本の放線状皮質静脈の末梢根の吻合;l 浅皮質静脈と深皮質静脈の吻合;m 浅皮質静脈と放線状皮質静脈の側枝との吻合;n 深皮質静脈と放線状皮質静脈の側枝との吻合;o 2本の星状静脈の吻合;p 髄質を直走する細静脈;q 髄放線からの静脈の流出路;r 髄質の毛細管網.

Spanner(Verh. anat. Ges.,1937)によると動静脈吻合は常にしかも数多くみられるつながりであって,腎杯には1qcmあたり360, 線維被膜と皮質では放線状皮質動脈と同名静脈の間に1qcmあたり264も存在するという.

 腎臓のリンパ管はきわめて豊富であって,浅層のリンパ管網と深層のリンパ管からなっている.深層のものは動脈に沿っている.

 腎臓の神経.腎臓神経叢Plexus renalisがよく発達していて,大小たくさんの神経節をもっている.この神経叢は腹腔神経叢と腹大動脈神経叢からの枝によってできている.また小内臓神経から腎臓神経N. renalisを受けており,そのほか交感神経幹の腰部からも直接の枝が来ている.

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Hirt(Z. Anat. u. Entw., 73, Bd.,1924)によるとそのほか多数の細い神経束が腎上体から腎臓の被膜を貫いて腎皮質にはいっているという.

 線維被膜には細い神経東からなる繊細な神経叢がある.これからごく細い無髄の神経緯維が出て,これ,が恐らく第2の神経網をなしていると考えられる(Stöhr jr., Z. Anat. u. Entw., 71. Bd.,1924).

 腎臓の機能:腎臓は体のなかで水と塩類,および蛋白の分解によって生じた最終産物を排泄する器官である.この排泄は能動的な細胞の働きによるものか,あるいは単なる濾過の現象であるかは昔から研究されていて,いろいろな意見が報告されてきた.また尿細管のどの部分で尿のいろんな成分が分泌されるかということが問題なのである.腎臓は半透膜を備えた単なる濾過器であるとは考えられない.というのはもしそうならば糸球体は1日に約60リットルの水を排出して,そのうちのほとんど58リットルが尿細管で逆吸収されなければならないからである.こんな大きいエネルギーの消費は当を得ていないし,腎臓に供給される酸素の消費量とも合わない.いずれにしても腎臓は常に一定した低い濃度の血液から,極めて変動に富み,しかも高濃度である尿を生産している事実から,腎臓の細胞は能動的な(自律神経系に支配されている),かつ正確に調節のできる腺の能力をもっていると考えられる.

 尿の個々の成分が尿細管のどの部分から分泌されるかという問題についてもいろいろ議論されてきた.今のところ恐らく糸球体も尿細管も同じ物質を分泌する能力をもっているのであろうと考えられる.この両者の本質的な相異は尿として分泌される成分の濃度に関している.糸球体はほとんど純粋の水を多量に排出し,尿細管は高度に濃縮された尿素と食塩をだすことができる.尿細管の細胞は貯蔵器官であるらしく,取り入れた物質を恐らくはコロイド粒子に吸着して貯え,糸球体から排出される水の量に応じて送り出しているのであろう(W. B. Meyer in Med. Welt 1930).

 この見解が正しいことを示す証拠としてHirtとEllingerの研究があげられる.この人たちは(Arch.exper. Path.,150. Bd. )生きているカエルにおいて腎臓の分泌作用を顕微鏡下に観察した そして螢光色素の排出と吸収を紫外線によって観察したのである 色素は糸球体において出されて膀胱まで達し,そのさい尿細管あ全体にわたって色素やアルカリ,および水の逆吸収が見られた.糸球体が休止しているとき,または休止させられているとき,色素は尿細管の初まりの部の細胞から排泄される.しかし水はごく少量しか出されない.また無機塩の位置と量について尿細管のいろいろな部分の灰化標本をつくって顕微鏡セしらべた結果によると曲部の細胞が内腔に面したところでその分泌と吸収を営んでいる(Meier, F., Inaug.-Diss., Bern 1941, Hlntzsche, E., Schweiz. med. Wochenschr.1942).マルピギー小体の嚢内腔には無機塩が痕跡的にしか証萌されない.曲部ではその内腔が多かれ少かれ無機塩で充たされていて,曲部の上皮細胞は特にその内腔に接している部分に多量の塩をもっている.係蹄部にはごくわずかの無機塩しか含まれていないが,集合管になるとまた比較的多量の無機塩が見られる.

 Peter, Untersuchungen Uber Bau u. Entw. der Niere, Heft 1, Jena 1909;Heft 2,1927--Gännsslen, M., Der feinere Gefäßaufbau gesunder. und kranker menschlicher Nieren. Ergeb. inneren Med. u. Kinderheilk, , 47. Bd.,1934.

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最終更新日 13/02/03

 

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